金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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ハリケーンカトリーナと米国金融政策

2005年09月08日 | 社会・経済

ニューオーリンズを襲ったハリケーン カトリーナの威力は凄まく被災した街や人の写真を見ると胸が詰まる。ニューオーリンズには10数年前の冬に旅をしたことがあるが、フランス植民地時代の面影を残す中々面白い街だった。ニューオーリンズのあだ名はBig Easyで「明日のことをあれこれ考えない」スタイルの街という。街はジャズ関係と大人のおもちゃ的な店、アメリカにしては美味しいレストランが沢山あった。レストランではケイジャン料理という南部料理を出すが、これは魚介類を豊富に使った料理で日本人の口に合う。

あの陽気で楽しいニューオーリンズの街がハリケーンで破壊されてしまったと思うと誠に痛ましいが、我々金融業界に身を置くものとしては感傷に浸るのみならずカトリーナの米国金融政策に与える影響を分析しておく必要がある。

米国の投資家・金融筋の最大の関心事は「経済の減速を緩和するため金利引き上げをしばらく見送るかどうか?」というところにある。先週週末のウオールストリート紙(WSJ)を読むと、投資家の株式相場に対する見方は強弱相半ばしていた様である。

幾人かの投資家達は「ハリケーン『カトリーナ』の影響で原油価格が上昇し、商品出荷が遅れ企業利益が減少、経済成長率は低下する」と言い、他のものは「災害復興で消費と投資が伸びるので長い目で見れば株式市場にプラスである」と言う。

ところで週明つまり今週初めの火曜日(米国は月曜日が休日だった)、米国株式市場は大幅に値上がりした。これは米国株式市場の重しになっていた「石油」と「金利」の問題に改善の兆しが見えたことである。その後も米国株式相場は堅調であるから、今のところハリケーン「カトリーナ」によるマイナス影響よりも、連銀が金利引き上げについて様子を見るという見方の方が市場では勝っていることになる。この問題に関する本日のWSJの記事を見ておこう。

退任まで5ヶ月弱となったグリーンスパン議長は金利引き上げをしばらく見合わせるべきかどうかデリケートな問題に直面している。ハリケーンは近い将来の経済成長を阻害させる(米議会予算局の見通しでは成長率を0.5%~1%下押し)ので通常金利引下げを求められる。しかし一方ハリケーンの被害により物価上昇と潜在的なインフレ圧力が起こる。これは金利引き上げ要因である。

グリーンスパン議長が面している問題はそのどちらがが主たる懸念材料か?ということだ。

エコノミスト誌の調査によれば、50名のエコノミストの内15人はハリケーンに対応して金利引き上げを見送るべきであると言い、35名は見送るべきではないと言っている。

連銀が金融政策を調整するかどうか他の材料を含めて注目しておきたいところだ。

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