11月3,4日で西穂山荘から西穂高岳往復を目指した。3日の朝相棒のM君の車で6時半に西東京市の自宅を出る。八王子インター付近で少し渋滞はあったものの、ほぼ予定どおり11時過ぎには新穂高に到着。曇りという天気予報を裏切り新穂高の手前から雨脚が強くなっていたが、ロープウエーに乗る頃は本降りとなった。私はロープウエー乗り場で210円のビニール傘を買ったが、これが実に役に立った。ロープウエー終点から冬山装備に身を固めながらビニール傘を差して歩く。途中雨は霙に変わり、小屋に着いた時は雪っぽくなっていた。この日は2時頃から小屋に入り、グダグダと過ごす。夕食後西穂山荘自作の30分のDVDを希望者で鑑賞。中々良かった。夜半小用で外を見た時頭上は満天の星だった。
4日は午前4時半に起床し、5時10分にヘッドランプをつけて西穂高を目指す。我々が一番手である。昨夜の雪が20cm程積もり行く手の山道をすっぽり覆っている。その上に野うさぎの可愛らしい足跡。その可愛い足跡を追いつつ黎明の山稜を辿る。野うさぎが小さな足跡を残した処女雪を僕等が乱暴に蹴立てながら西穂高岳への道を急ぐ。
午前6時10分頃朝日が西穂高岳に当たりだす。快晴である。日が昇る方をみれば富士山、南アルプス、八ヶ岳連邦が一望である。
南に目を転じれば、ホテル、山小屋の灯火が映ろう上高地には薄いもやが低く這い、その向こうに霞沢岳が見える。また日が当たって明るいのは焼岳、その向こうには乗鞍岳が優雅に裾野を広げている。
独標(標高2,701m)手前で傾斜がきつくなり雪も吹き溜まってくる。しかも新雪は全く岩となじんでいないので、足場が決まらず若干手間取る。午前6時50分独標着。
さて独標の頂上からは厳しい岩と新雪のミックスした傾斜の強い降りが待っていた。ここで8mmロープを出してアンザイレン(ロープを結び合うこと)。まずM君が下降。薄っすらと雪を被った岩角に足場を求めて少し苦労している。独標を下り切るとまた次のピークの登り降りがある。雪が不安定なので我々は敢えてアイゼンを着けずに進む。急な岩場の降りでは一人が立ち止まりしっかり自己確保をして相棒を降ろす。ここで滑ると怪我ですまない可能性があるからだ。
午前8時西穂高岳手前の小ピーク・ピラミッドピークに立つ。写真はピラミッドピークから見た吊尾根で左が本邦第3位の高峰奥穂高岳で右が前穂高岳である。ここでレンズを広角から望遠に変えたりしながら写真を撮る。今回は少しでもきれいな写真を撮ろうと思い、一脚まで持参したのだが多少は効果が出ているだろうか?
さてここからの登山だか天気は上々で問題はないのだが、雪の付き方が不安定で細い岩稜の登り降りに神経を使うのでここで止めて慎重に下山することにする。心の片隅で「こんなところで西穂高岳を断念すると剣尾根や北方稜線が泣くぞ」という声がする。剣尾根や北方稜線とは日本を代表する冬山の名ルートで若い時には胸を借りたものだが・・・・しかしそれは30年も昔の話であり、長いブランクのある今は慎重第一と安全モードにギヤを入れることにした・・・・。
下山も慎重にロープを使う。トップで登るM君の黄色いアウターが紺碧の空に吸い込まれる様だ。
午前11時頃西穂山荘に無事帰着後コーヒーを沸かしゆっくり昼ごはんを食べる。西穂山荘から小1時間歩いてロープウエイ駅。12時半のロープウエイで下山。乗換駅で目の前に広がる笠ケ岳と錫杖ケ岳の写真を撮る。左手の岩に覆われた低いピークが錫杖ケ岳で右手の雪を頂いたピークが笠ケ岳だ。
新穂高には午後1時過ぎに到着。今夜の宿の新穂高温泉・高岳館を訪ねるも早過ぎるということでM君と高山までドライブして時間を潰す。午後5時前高岳館に靴を脱ぐ。屋上に檜の露天風呂あり。檜の半割りを枕にして暮れていく西穂高岳を湯の中から鑑賞する。晩御飯は飛騨牛のみそ焼きと刺身が売りもの。御腹一杯になって1泊2食の料金が1万円というのは悪くない。こうして多少消化不良気味なところはあるものの、それなりに充実した僕等の初冬の西穂高アタックは無事終了したのである。