今年の6月にこれからは「大手銀行の株は買い時」という主旨のブログを書いたが、今回は「邦銀株もそろそろ良いところまで来ているのではないか?」というウオール・ストリートジャーナルの記事を紹介しておこう。記事は11月21日のインターネットのアジア版に出たもので主旨は以下のとおりだ。
- 邦銀は明るい先行きを予想しているが、投資家にとってベストの時期は過ぎたかもしれない。邦銀は不良債権を処理したので過去2年間株価は上昇している。フェデリティやフランクリン・リソーシズのような主な西側投資家はこのブームに乗ってきた。
- 今日から12月2日までの間、三菱東京UFJ、三井住友、みずほを含むトップクラスの銀行が9月期の中間決算発表を行なうが、収益の急激な回復が報じられる見込みである。では投資家は邦銀株を買い続けるべきか?必ずしもアナリストはそうではないと言う。
- 幾つかの銀行の株価は高い株価を維持してきているが、多くのアナリスト達はそれらの株価は正当に評価されていてこれ以上上がる可能性はないと考えている。例えばモルガンスタンレー東京の銀行アナリスト・鮫島氏は銀行セクターの格付を引き続き「魅力的」としているが、今後幾分かの株価下落を予想している。彼は三菱東京UFJの株価は向こう1年から1年半の間に130万円(先週金曜日の終値は159万円)がターゲットになり、三井住友は同じく102万円(終値は118万円)だと言う。
- シンガポールの資産運用会社アバディーン社のマッセ氏は「不良債権問題は既に解決済みだが、国際水準から見ればまだ低い収益性を以下に改善するか?という大きな問題がある」と言う。
- 日本の銀行株は1990年代と2000年代初めは忘れられてきたが、2003年中頃から回復し始めた。2005年中頃多くの外人投資家が日本経済の回復を確信し、銀行セクターに資金を投入したので、銀行株は急上昇した。例えば今年6月末から三菱東京UFJの株価は68%(2003年4月からでは3倍以上)上昇している。この株価ラリーを通じて大きな利益を得たのは西側の機関投資家である。彼等は現在大手銀行の株の約25%を保有している。
- 先月の投資明細レポートによれば、フェデリティ・インベスツメント・オーバーシーズ・ファンドは三井住友を上位10銘柄の中に、フランクリン・リソーシズ・テンプルトン・フォーリン・ファンドは三菱東京UFJと三井住友を上位10銘柄の中に入れている。
- しかしこれらの株は元気さを失う可能性がある。銀行収益の改善は不良債権処理によるもので、中核となる貸出や金融サービスの拡張から来ているものではないからだ。
以上がウオール・ストリート・ジャーナルの論点だが、私の意見を若干加えると邦銀の収益はノンリコース・ローン等かなりリスクの高い与信から得ているところも多い。大都市の不動産価格が安定している限りはリスクが顕在化することは少ないだろうが、一旦不動産のミニ・バブルがはじけると問題が表面化する可能性がある。
なおプラスの点を見れば、これから増える退職者等相応の運用資産を持った個人層から手数料を稼ぐ可能性を見落とすべきではない。
今しばらくの間、大手銀行がどちらへ向くのか良く様子を見る必要はあるが、相場を牽引してきた海外機関投資家に達成感が出ているとすれば銀行株の頭は重いと考えておく方が妥当かもしれない。