ニューヨーク・タイムズにKen Belson氏がThis time,Japan's gloom runs deeperという記事を書いていた。Belson氏は日本で12年暮らし、日本企業や野球のことを書いてきた。記事の表題は「今回は日本の憂鬱はより深い」という意味で、具体的にいうと東日本大震災の影響は95年の阪神大震災より根深いという彼の分析である。
多くのエコノミスト達はV字型の景気回復を期待している。実際日経平均は震災直後から18%上昇した。しかし3月に日本に戻ってきたBelson氏は阪神大震災と今回では影響度は違うと感じる。
一つは電力の問題。検査のため一時停止している原発が再開されないと電力不足は来年も続く。東北復興と福島原発事故処理のために消費税を10%に引き上げるという政府案は景気を急降下させる・・・と同氏は続ける。
Belson氏はこの憂鬱さの関連から、長銀破綻前の同行主催のパーティに招かれたことを思い出し、話は同行の為替ディーラーだった小池氏との最近の話につながっていく。
現在ファイナンシャルプランナーである小池氏は「私は顧客に考えられないようなことを考えなさいと述べている」と語る。また小池氏達は日本経済全般と日本のファーストクラス企業を注意深く区別している。ファーストクラス企業というのは、「ジャパンフォーカスファンド」が投資するような強い企業だ。
Belson氏はマシューズのジャパンファンドの石田マネージャーの「ファーストクラス企業というのは、日本電産のような企業。小型モーターというニッチな部門で強みを発揮し、かつ中国・韓国・台湾のライバル企業もなく海外生産比率が高い」というコメントを紹介している。
石田氏は円はドルに対して史上最高値圏で推移しているが、輸出業者から抗議の声を聞かない。実際総ての企業がコスト削減を語っているので、今日の1ドル80円は94年の80円とは違うと述べている。
コスト削減と生産の海外移転で企業の税前利益は来年度には30%上昇すると石田氏は予想する。
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震災と原発事故の規模、復旧にかかる経済的負担の大きさを考えると、経済全体が良くなるにはかなり時間がかかる。インフラ整備などの遅れはファーストクラス企業の海外脱出を加速する。
そのことの良し悪しは別として、資産を運用する観点からは今の日本については「全体を買う」という考え方より「ファーストクラス企業」にフォーカスするという考え方の方が理にかなっているようだ。