金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

独仏eleventh hourにギリシア救済合意

2011年07月21日 | 英語

今日(21日)ギリシア救済について欧州サミットが開かれるが、それに先立ちメルケル首相とサルコジ大統領の間で基本的な合意ができたというニュースが市場に流れている。

ところでギリシア救済問題や米国の債務上限引き上げ交渉に関する記事で使われるのがat eleventh hourという表現。最初は夜の11時か?と読み飛ばしていたが、毎回11時というのは変だし、第一11時であればeleven o'clockではないか?と思い少し調べてみた。するとEleventh hourというのは「土壇場で」という慣用句で、聖書のマタイ伝に語源があることが分かった。さらに調べてみると午前6時がスタートで11番目の時間というのは午後5時ということが分かった。マタイ伝によると、あるぶどう園のオーナーが、ぶらぶらしている人に一日一定金額で農園の仕事を与えた。ただし朝6時から働いた人も午前9時から働いた人もぎりぎりの午後5時に働いた人も貰える日当は同じ。不公平な感じだが。

余談が長くなったが、エコノミスト誌にEach time European policymakers reacted similarly: with denial and dithering,followed at the eleventh hour with a half-baked resucue plan to buy timeという文章が出ていた。

(南欧諸国の債務危機が起きると)毎回欧州の政治家達は同じ反応を示す:否定と優柔不断、そしてその後は土壇場になって時間稼ぎのための中途半端な救済プランが続く

この記事の中でエコノミスト誌は「中途半端でない本格的な救済プラン」の骨子を提案していた。それは「明らかに支払不能に陥っている国の債務の削減(債務免除)」「債務免除により毀損した欧州の銀行の資本再構築」「支払い不能に陥っている国と支払能力のある国の間のファイヤーウオールの構築」である。

そしてエコノミスト誌はユーロ圏はEFSF(欧州金融安定ファシリティ)を拡大するとともに、連帯保証による「ユーロボンド」を発行する必要があると主張する。そしてこれは特にメルケル首相にとって大きな政治的飛躍となる。それは気持ちの良い選択肢ではない。ドイツは無責任な南欧諸国に富を無期限に移転することに強く反対しているからだ。だがエコノミスト誌はこの選択肢を取らないとユーロは終わりになると強く警告していた。

☆   ☆   ☆

強い産業基盤と競争力を持つドイツなどと競争力の弱いギリシアなどが同一通貨圏を形成するというのは、下世話なたとえをすると、ゴルフの上手い人と下手な人がスクラッチで勝負をするようなもの。それぞれが独立した通貨を持っていると、競争力の弱い国の通貨価値が下落することで、ハンディを貰うことができたが、同一通貨になるとこのハンディが貰えない。

エコノミスト誌の主張は「ハンディキャップの代わりに、ある程度の負け分をチャラにしてあげなさい。そうしないとゲームエンドですよ」ということを含むものだが、ドイツがそれを受け入れることができるだろうか?

メルケルとサルコジ大統領の合意内容は今のところ詳しく分からない。今日の欧州サミットの合意内容がeleventh hourの生煮えのものであるが、スペインやイタリアなどに押し寄せる債務危機を食い止めるものであるかどうかは、これらの国の債券市場というバロメーターが判定を下すだろう。

それにしても日米欧なんとeleventh hourの決着が多いことか。

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米国の債務上限引き上げでもドル上昇の見込み薄

2011年07月21日 | 金融

昨日(7月20日)オバマだ大統領が財政赤字削減法案の具体化に向けて、時間を要する場合は短期間の短期間の連邦債務上限額の引き上げを受け入れると発表した。超党派議員グループが作成した3兆7千億ドルの財政赤字削減策をベースに、大枠の合意に至ればデフォルトという最悪の事態は回避される見通しがたってきた。

債務上限引き上げ交渉の遅れでプレッシャーを受けてきたドルだが、あるアナリストは債務上限問題が片付いても、ドルは上昇しないという見方を示している。

ロイターによると、ドイツ銀行ニューヨークの為替戦略のチーフRuskin氏は「債務上限問題の解決は、ドルにとってプラス材料だが、投資家のリスク選好を高めるので(ドルは売られ高金利通貨に投資されるので)、プラス材料は帳消しになるだろう」という見方を示している。

またForex.comのチーフ・ストラテジストDolan氏は「ドル上昇が起きる現実的な唯一のチャンスは、(今日予定されている)欧州圏首脳会議がユーロ圏の債務危機を緩和させることができず、ユーロが売られる場合だ」と述べている。

さてその焦点の欧州サミットだが、ギリシアのデフォルト回避に向けては合意に至る可能性が高そうだ。

FTは昨日「ドイツとフランスが基本的な合意に達した」と報じている。記事によると「メルケル首相の報道官はドイツ・フランスの共通の立場は合意され、トリシェECB総裁とファンパイロンEU大統領と討議された」ということだ。合意内容の詳細は明らかでないが、交渉に関わった銀行首脳によると、ギリシア救済プランは銀行に対する課税または銀行の保有債券のより期限の長い債券との交換を含んでいる(ただし両方はない)と述べている。

また事務局によるとバロッソ欧州委員長のプランは、ユーロ圏の4,400億ユーロの救済ファンドの力を拡大し、救済ファンドから融資を受けていない国に対してもクレジットラインを提供し、これらの国の銀行の資本再編することを含むというものだ。

銀行首脳達の話では、流れはフランスが支持する銀行に対する課税(欧州圏の銀行に、保有する全資産に対し0.0025%の課税を5年間続ける。これにより年間100億ユーロの資金が捻出される)プランで、これによりギリシア債務にデフォルトが回避される。

ドイツ政府はこれまで、この銀行課税方式には乗り気でなかったが、フランスと基本的な合意に達したということは課税方式を受け入れたということだろうか?(私見)

☆   ☆   ☆

ここ数週間の懸念材料であった米国の債務上限問題と欧州債務問題については、当面の打開策が見えてきた、というところだろう。だが米国の債務上限引き上げは、増税や財政支出の大幅な削減を伴う。残された景気浮揚策は金融政策のみとなると、ドル金利の低下が見込まれるため、ドルの地合は弱いということなのだろう。

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