今日(21日)ギリシア救済について欧州サミットが開かれるが、それに先立ちメルケル首相とサルコジ大統領の間で基本的な合意ができたというニュースが市場に流れている。
ところでギリシア救済問題や米国の債務上限引き上げ交渉に関する記事で使われるのがat eleventh hourという表現。最初は夜の11時か?と読み飛ばしていたが、毎回11時というのは変だし、第一11時であればeleven o'clockではないか?と思い少し調べてみた。するとEleventh hourというのは「土壇場で」という慣用句で、聖書のマタイ伝に語源があることが分かった。さらに調べてみると午前6時がスタートで11番目の時間というのは午後5時ということが分かった。マタイ伝によると、あるぶどう園のオーナーが、ぶらぶらしている人に一日一定金額で農園の仕事を与えた。ただし朝6時から働いた人も午前9時から働いた人もぎりぎりの午後5時に働いた人も貰える日当は同じ。不公平な感じだが。
余談が長くなったが、エコノミスト誌にEach time European policymakers reacted similarly: with denial and dithering,followed at the eleventh hour with a half-baked resucue plan to buy timeという文章が出ていた。
(南欧諸国の債務危機が起きると)毎回欧州の政治家達は同じ反応を示す:否定と優柔不断、そしてその後は土壇場になって時間稼ぎのための中途半端な救済プランが続く
この記事の中でエコノミスト誌は「中途半端でない本格的な救済プラン」の骨子を提案していた。それは「明らかに支払不能に陥っている国の債務の削減(債務免除)」「債務免除により毀損した欧州の銀行の資本再構築」「支払い不能に陥っている国と支払能力のある国の間のファイヤーウオールの構築」である。
そしてエコノミスト誌はユーロ圏はEFSF(欧州金融安定ファシリティ)を拡大するとともに、連帯保証による「ユーロボンド」を発行する必要があると主張する。そしてこれは特にメルケル首相にとって大きな政治的飛躍となる。それは気持ちの良い選択肢ではない。ドイツは無責任な南欧諸国に富を無期限に移転することに強く反対しているからだ。だがエコノミスト誌はこの選択肢を取らないとユーロは終わりになると強く警告していた。
☆ ☆ ☆
強い産業基盤と競争力を持つドイツなどと競争力の弱いギリシアなどが同一通貨圏を形成するというのは、下世話なたとえをすると、ゴルフの上手い人と下手な人がスクラッチで勝負をするようなもの。それぞれが独立した通貨を持っていると、競争力の弱い国の通貨価値が下落することで、ハンディを貰うことができたが、同一通貨になるとこのハンディが貰えない。
エコノミスト誌の主張は「ハンディキャップの代わりに、ある程度の負け分をチャラにしてあげなさい。そうしないとゲームエンドですよ」ということを含むものだが、ドイツがそれを受け入れることができるだろうか?
メルケルとサルコジ大統領の合意内容は今のところ詳しく分からない。今日の欧州サミットの合意内容がeleventh hourの生煮えのものであるが、スペインやイタリアなどに押し寄せる債務危機を食い止めるものであるかどうかは、これらの国の債券市場というバロメーターが判定を下すだろう。
それにしても日米欧なんとeleventh hourの決着が多いことか。