FTによると中国政府は早ければこの四半期中にも集中型貸株市場の創設を行なう予定だ。Centralised Securities Lending Exchangeと呼ばれる機構の最大の株主になるのは、規制当局の中国証券監督管理委員会で、上海・深セン証券取引所や証券会社や他の金融機関も株主になると予想される。
現在のところ適格ファンドマネージャーだけが、証券会社から株を借りることができるが、貸株対象銘柄が285と少ないことや資産面の制限が厳しいことから貸株取引は未発達だった。
中国がこのタイミングで貸株市場創設に動く理由について、複数の資産運用者は昨年の中国の株式市場のパフォーマンスが-22%と世界最悪だったことをあげている。貸株取引を擁護する立場でいえば貸株取引の発達は株式市場の流動性を高めるとともに、株式保有者に手数料収入をもたらすからだ。また証券会社のトップの中には証券監督管理委員会のトップの交代が影響しているという見方もある。
FTによると証券会社は貸株市場の創設はヘッジファンド業界の発展に拍車をかけると見ている。現在の中国のヘッジファンドは「サンシャインファンド」が主流でさらにこれが拡大するという観測なのだろう。
少し脇道にそれるが、「サンシャインファンド」というのは法整備がなされた信託会社を活用して設定される私募ファンドで、政府に登録され情報も開示されている。従来のファンドマネージャーが知人の金を集めて私的に運用するアンダーグラウンド的なファンドに対して「陽光」(サンシャイン)が見えるからサンシャインファンドと呼ばれる。
因みに野村総研の知的資産創造2011年9月号「富裕層の投資ニーズ拡大で注目されるサンシャイン・ヘッジファンド」によると、2010年末のサンシャイン・ヘッジファンドの残高は186億ドルで公募ファンドである投資信託(残高3,870億ドル)の5%程度の規模だ。
中国の資産運用業界は急速に拡大し、オープンエンド型ファンドの運用残高はすでに世界のトップテンに入り、日本の投信残高の約半分に相当する規模になっている(「知的資産創造」)
貸株市場の発展で中国株のパフォーマンスが改善することに期待したいものだ。