今月から日銀が導入したマイナス金利政策の狙いは、銀行が日銀に積む当座預金の一部にマイナス金利を課すことで市中銀行の貸出を増やし、経済を活性化させることにある。
だがマイナス金利は色々な副作用を持つ。私は副作用の中で「資産運用金利の低下は家計と企業(年金等の退職金勘定)に一層の貯蓄を強いる」ことが大きいのではないか?と考えている。
モデルケースで考えてみよう。
仮に退職者や企業の年金勘定などが10年間毎年400の支出が予定されているとしよう(家計なら400万円、年金なら4億円と考えてよいだろう)。
資産運用の予定利回りをゼロとすると期初(当初)に準備(積み立て)しておく金額は4,000になる。
仮に予定利回りを2%とすると期初に積み立てしておく金額は3,665になる。
今では考え難い話だが予定利回りを5%とすると期初に積み立てておく金額は3,243で済む。
マイナス金利について少し極端だが年間マイナス1%の金利を考えてみよう。
10年後400を受け取るためには期初に438の資金を用意する必要があり、10年間の合計では4,187の資金を用意する必要がある。
個人の場合は仮にマイナス金利が口座に適応されることになると誰も銀行に預金しなくなり、タンス預金にするだろうから4,000ですむだろうが、
企業年金等の場合はタンス預金とはいかないだろうから頭の痛い話である。
マイナス1%は極端なのでマイナス0.1%としても4,018の資金を用意する必要がある。
少し難しい言い方をすると「金利(割引率)の低下は負債(将来の支出)の現在価値を拡大する」のである。
負債の現在価値が拡大すると家計や企業は現在の収入からより多くの資金を貯蓄に回す必要を迫られ、支出や投資に向かう資金が減少するのである。
このように考えるとマイナス金利政策は持続するべき政策ではないと私は考えている。