今日(6月6日)読売新聞朝刊によるとみずほFGの佐藤社長は「年功序列の意識が根強い人事制度を見直し、重要ポストに若手を積極的に登用する。傘下銀行の支店長は40歳以上で就任するケースが多かったが30歳代でも登用する」ということをインタビューで述べた。
額面通り受け取ればこれは良いことである。またみずほFGは40歳代前半から将来の役員候補を選抜し、帝王学を伝授するそうだ。
これも良いことである。もっとも将来の役員候補の選抜と帝王学の伝授は、声高にアナウンスするかどうかは別として大手行や一般の会社でも既に広く実施されていることだろう。
そこそこの規模の会社には昇格基準というものがある。基準があるから特定の上司の恣意に左右されることなく、部下は安心して働き昇格を期待することができる。ただ世の中「基準どおりの運用」だけで良い訳ではない。
時には基準や規程を超えた運用により、人心にインパクトを与えることも必要だ。
孫子は「無法の賞を施し、無政の令を懸くれば、三軍の衆を犯うること一人を使うが如し。」と述べている。
時には規格外の恩賞を施し、時には一般ルールを超えるルールを定めることで大部隊をあたかも一人の兵士を使うように使いこなす、という意味だ。
そういう意味ではみずほFGが従来の昇格基準を踏み出して若手を登用することは理に適っているといえる。
だが世の中、良い話ばかりではない。登用される人材があれば冷遇される人物も当然出てくる。能力主義はコストカットのために使われることもある。
この前テレビで西武信金の落合理事長がインタビューに出ていたが、同金庫では「60歳の役職定年を廃止し60歳以降でも支店長として活躍する道を開いた」と述べていた。そして実際に60歳以上で年収が200万円以上増えたという支店長の話も紹介されていた。
落合理事長は「同金庫は年齢による定年を廃止し、才能による定年制度に変えた」という趣旨の話をしていた。
これもまた「無法の賞を施し、無政の令を懸ける」方法だろう。どこの年齢層を活性化するために厚遇を図るかは、その金融機関の従業員年齢構成やターゲットとする商売や顧客層によって異なる。若手の登用が良いか、ベテランの活用が良いかは一概にいえるものではない。
ただし二つの金融機関の話を見ると保守的だった金融機関の人事政策にの変化がでているようだ。
コストカットのための能力主義ではなく、新しいビジネスエリアを開くための能力主義であることを期待したい。