金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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老後資金の運用利回り、3%以上を期待してはいけない

2016年06月21日 | ライフプランニングファイル

CNBCに世界最大の資産運用会社(運用資産約4.5兆ドル)のラリー・フィンクCEOが「今日の投資環境下で退職金の期待運用利回りは最大でも4%。それ以上のものを期待するのは間違っている」と述べた。

このこと自体は別に新しい話でもなんでもない。先進国の高齢化や中国経済の減速で世界の経済成長率が低下しているので、長期的な期待運用利回りを引き下げるのは当然のことである。

またラリー・フィンク氏は「米国株だけであれば長い時間をかけると6~7%のリターンはあるだろう」と述べている。これは典型的な退職金運用ポートフォリオは株と債券のバランス型なので、株式オンリーのポートフォリオよりもリターンは低下(リスクも低下)するからである。

私はタイトルで「老後資金の運用利回り、3%以上を期待してはいけない」と書いた。これは日本の個人投資家向けの指標である。ベース金利が米国より低い日本では当然期待利回りも低くなるなるからだ。

なおラリー・フィンク氏の話を敷衍して次のことを述べておこうと思う。

一つは「10年以上保有する予定の老後資金があるならば、その相当部分は米国株に投資するべきだ」ということだ。日本から米国株に投資する場合の最大のリスクは為替リスクだ。リスクはプラスにもマイナスにも作用する。想定外の為替益もまたリスクなのだが、ここではマイナスのリスクつまり為替損を考えてみよう。仮に104円で投資していたドルが10年後に80円になっていると24円の損。単純計算では1年2円40銭。投資元本に対するマイナス利回りは2.3%だ。仮に2.3%を上回る配当を得る投資であれば、ドル円為替が80円になってもpay offする。それ以上の円安や株価上昇は総てプラスと考えてよい。

米国株には配当利回りが2.3%を上回る銘柄は多い。もちろん日本株でもこの水準を上回る配当銘柄は多いので何故米国株を買う必要があるのか?というとそれは企業に対する成長期待があるからだ。

投資の教科書にでる銘柄だがジョンソンアンドジョンソンなどはその典型的銘柄である。下のチャートが示すように同社の株は3%近い配当利回りを確保しながら安定的に時価総額を増やしている。短期的な値上がりを期待する投機家には面白味のない株だが、何もしないでじっくり持つには良い銘柄だと思う。

次に「投資コストに敏感になる」ということだ。仮に期待利回りを3%としても、投資信託の運用報酬に1.5%も支払うとネットの利回りは1.5%しかないことになる。高い運用利回りが期待できない時代だから、運用報酬にもっと敏感になろう。

最後に「絶対にうまい話に乗らない」ということだ。この時期簡単に儲かる話はない。簡単に儲かる・絶対に儲かるなどという話はウソである。

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今週木曜日に行われる英国の国民投票の行方に世界の投資家は注目している。先週末からやや残留派が優勢なのでは?という観測が流れ、昨日は世界中で大きな買戻しが入った。残留が勝つか?離脱が勝つか?それは分らない。分っていることはどちらが勝つにしろ僅差の勝利になりそうだということだ。僅差の勝利ということは仮に残留派が買ったとしても、離脱派の主張を政策に織り込んでいかざる得ないことを意味する。それが株価にどう影響するかということは現時点での判断は難しい。

英国の国民投票の次に世界の注目を集めるのは今秋の米国大統領選挙だ。こちらも誰が勝つか分らない。政治は予測不可能だ。むしろ世界の消費者を相手にした米国のコングロマリットの業績の方が将来の予想は立ちやすいだろう。政治が不透明な時に世界企業への投資を考えることは自然な成り行きなのである。

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