金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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英国のEU離脱、手続きは長くかかるだろう

2016年06月25日 | 国際・政治

昨日(6月24日)の朝ブログを書いた時点では世論調査によると英国のEU残留見通しがやや上回っていた。だからその前日全世界でリスクオンモードになり、株式市場は上昇していた。しかし開票が進むにつれて、離脱支持が増えて最終的には51.9%対48.9%で国民投票の結果は離脱と決まった。

昨日の朝の予想は見事に外れた訳だが、これは「英国にEUに留まって欲しい」という希望が判断を狂わせたのだろう。恐らく世界の大部分の投資家もまた残留を希望していたので、残留組優勢というニュースに過剰に反応したのかもしれない。

さて英国民は僅差でEU離脱を決めたが、これはホンのスタート点に過ぎない。EUメンバーの離脱については1985年にグリーンランドがEUの前身である欧州経済共同体から離脱した例があるだけで前例がないので、手続きは複雑になることが予想される。

加盟国の脱退ルールの定めたリスボン条約50条のサマリーをざっと読んでみたが、決められていることは「脱退を決めた国は欧州理事会に脱退意思を正式に通知する」「欧州理事会は交渉のガイドラインを発表する」「EUと脱退国の交渉が始まる」「欧州理事会は欧州議会に同意を求める」「議会は特定多数決の決定で承認する」というものだ。

もし2年間の交渉期間中に結論が出ない場合は、欧州理事会と脱退国の合意がない限り、脱退国のメンバーシップは自動的に終了する。

英国がEUを離脱するということは法律的には、英国が欧州基本条約とそれに付随する経済協定等の摘要から外れるということを意味する。

英国はEUを離脱し、EUの意思決定への参加と予算拠出義務を失う。しかしEU諸国の財やサービスへの自由なアクセスを希望するだろうから、新たに包括的な経済協定を結ぶことを模索するだろう。だがその姿はまだ見えないし、EU離脱派の増加を懸念するドイツ・フランスなどは交渉のハードルを高める可能性がある。

総ては不確実である。不確実な時、世界の投資家はリスク回避に動く。金曜日の世界の株価急落が英国のEU離脱リスクに投資家が身構えた結果だ。一部には売られ過ぎの銘柄もあり今後買戻しが入るだろう。だが英国のEU離脱が実現までには色々な政治外交上のイベントが続く。安定した市場は遠くなった。

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