金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

三菱UFJグループの法人融資統合記事を考える

2017年05月13日 | 金融

今日(5月13日)の日経新聞朝刊に載っていた三菱UFJグループが、傘下の三菱UFJ信託銀行の法人融資を三菱東京UFJ銀行に集約するというニュースだが、記事は主に三菱UFJグループの業務効率化の観点から集約が進められると論じていた。

法人融資が伸び悩む中、窓口を一本化することは効率化につながる。しかし資産運用部門と法人融資部門を分離する意味はそれだけではない。

いやもっと重要なことは、年金資金等顧客の資産を運用する部門と銀行の自己勘定で融資を行う部門が独立していないと、受託者責任を果たせない場合がでる可能性があるということだ。

たとえば業績不振に陥った上場会社に銀行が融資をする一方、年金資産で株式投資を行っているとしよう。受託者責任の観点からは、業績回復が見込めない会社の株はさっさと売り払うべきだし、インデックス運用の一部として当該会社の株を持っている場合は、経営陣に対して、業績改善策を求めたり、場合によっては株主総会における会社提案に対してノーをいう必要がある。しかし融資というしがらみがあると、これらの行動を取るのに二の足を踏む場合もあるだろう。逆に融資取引を通じて得た情報で株の売買を行うとインサイダー取引になってしまう。大手金融機関は「インサイダー取引」については十分注意しているはずだが、「李下に冠を正さず」の方が良いことは間違いない。

よって「受託者責任」を遂行する観点から融資部門と顧客の資産を運用する部門は分離することが好ましいのである。

この受託者責任という言葉は、英米発のFiduciary Dutyフィデュ―シャリー・デューティーという言葉の訳語として日本に導入された。

ただし最近では金融庁は「真に顧客本位の業務運営」と定義を見直し、金融行政の最重要施策と位置付けている。

不良債権の償却と貸出難に呻吟した日本の銀行が活路を見出してきたのが手数料の獲得。手数料は投資信託や一時払い終身保険の販売で一般消費者から銀行に流れ込んできた。極論をすると一般消費者の出費で銀行が助かった訳だ。

もし消費者も投資信託等金融商品への投資で資産を増やすことができたならば、win-winの関係といえるのだが、銀行が販売した投資信託等で資産形成に成功した消費者は少ないのではないだろうか?何故かというとそれは金融機関が「真に顧客本位の業務運営を行っていなかった」からである。

もう少し突っ込んで言うなら、資産運用会社である信託部門と運用商品を販売する銀行部門は独立していることが望ましい。そして販売部門は自社商品をラインアップするだけでなく、本当に顧客のためになる商品を販売することが求められるのである。

マスコミが受託者責任問題の木鐸であろうとするならば、三菱UFJの融資業務統合についてもこのような角度からの切り込みが欲しかったと感じた次第だ。

 

 

 

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コミ―FBI長官解任は、1993年の長官解任より世論は不評

2017年05月13日 | ニュース

今週トランプ大統領がジェームス・コミーFBI長官を解任したニュースが耳目を集めている。

ブルンバーグは「FBI(連邦捜査局)がトランプ大統領の選挙キャンペーンとロシアとの関係について捜査を進める中でのトップ解任だから、大統領自身に火の粉がかかる可能性がある」と報じている。

トランプ大統領がロシアとどのような関わりがあったか(なかったか)ということについて、詳しい情報を持ち合わせていないし、現段階で特別な関心もない。

関心があるのは、この件が政権運営にどのような影響を及ぼすかという点である。

過去にFBI長官が任期中に解任された例は一件しかない。その一件はクリントン大統領が1993年にウイリアム・セッションズ長官を解任した件だ。

ギャラップはこの件と今回の件に関する世論調査の結果を比較している。

セッションズ解任について当時の世論は44%が是認・24%が否認・意見なしが32%だったが、今回のコミ―長官解任については、是認39%・否認46%・意見なしが15%で、否定的な見方を示す人が多かった。

理由はトランプ大統領が不人気だからではない。長官解任直前の大統領支持率は41%だった。これは奇しくもセッションズ解任直前のクリントン支持率と一緒だ。

今回のFBI長官解任が不評なのは、解任理由やプロセスに不明な点が多いからだ。セッションズ解任の時は司法省が彼の税金と国有財産を不正に取り扱っている可能性があるというレポートを事前に提出していた。

今回ホワイトハウスは当初は司法省のローゼンスタイン副長官がFBI長官はヒラリーの電子メール疑惑について捜査指揮が不適切だったというレポートに基づいて、解任したと発表していた。しかしその後トランプ大統領は事前にコミー長官の解任を決めていたとホワイトハウスは明言している。

マスコミの中には「FBI長官解任は捜査妨害だ」と書くところもでている。

このような不透明さが世論の不評につながっている。なお本件に関する世論は支持政党色がはっきりでている。共和党支持者の79%は解任を支持し、反対は13%。一方民主党支持者の78%は解任に反対し、指示したのは14%に留まった。セッションズ解任ではこれほど政党色ははっきりでていなかった。

なお長官解任前後でトランプ大統領に対する支持率は41%で変わっていない。トランプ大統領には目下のところ一定の岩盤のように強い支持基盤があることは事実として見ておいた方が良いだろう。

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