先週日曜日に正式に合併交渉を行っていることを認めたドイツ銀行とコメルツ銀行の株価は月曜日(3月18日)各々4%、7%上昇した。
両行の株価は過去1年で約4割下落していたから合併話で一息ついた、と言いたいところだが合併がすんなりいくかどうか疑問視する人も多いようだ。
合併する場合のハードルは色々あるが最大のハードルは人員削減だろう。巷では14万人いる従業員の2割強に相当する3万人の人員削減が必要という声がでている。
次に合併して欧州3位(1位は英国のHSBC、2位はフランスのBNPパリバ)の銀行が誕生したとしても、ドイツ内外での厳しい競争が続くことだ。ドイツでは中小の貯蓄銀行(約1,600)の力が強く、中堅・中小企業取引で大銀行がシェアを伸ばすのは容易でないと言われている。
もっとも2008年の金融危機以降ドイツ政府の資本注入(政府が株式の15%保有)を受けたコメルツ銀行は、人員削減と預貸業務に集中し国内優良企業取引を拡大しているが、国内市場の競争は苛烈なので業容拡大を維持できるかどうかは懸念材料だ。
一方ドイツ銀行は預貸業務よりもトレーディングや投資銀行ビジネスに注力してきたが、この分野では米銀にシェアを奪われてしまった。
合併銀行の狙いはコメルツ銀行が顧客取引で集めた低コストの預金を使ってドイツ銀行の投資銀行ビジネスを伸ばそうというものだろうが、画餅に帰すかもしれない。
ひと昔前はドイツ銀行の名前は輝いていたが、世の中の変化は激しい。
金融機関は外部環境に非常に影響を受ける業種であるが、ドイツの銀行を苦しめたのは長期にわたるウルトラ低金利政策と手数料に辛い商慣行と過当競争だった。
このドイツの銀行を苦しめている環境はまったく日本の銀行にも共通する問題。
異業種からの参入などで先進国の銀行は押しなべて苦しい状況にある。
その中で比較的検討しているのが米国の銀行だ。これは中央銀行が政策金利をそこそこのレベルに維持していることや各種の金融取引で手数料を収受する機会に恵まれていることがあげられる。もっとも投信の受託手数料などは米国は世界一低いから「金融市場の効率性を金融機関と投資家双方が享受している」ともいえるだろう。この金融市場の効率性に対する投資家の厳しい視線が、米国の金融機関に規律を与えているともいえる。
両行の合併話は日本の金融界の将来を予想する上でも注目に値するだろう。