金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

自動車業界の憂鬱

2019年03月06日 | 投資

WSJにGathering threats stir doubts about auto sectorという記事が出ていた。

世界的なコンサルタント会社AlixPartnersの最近の調査によると2019年には、自動車業界は小売業、エネルギー業の次に難局に直面することが高いと考えている投資家やアナリストが多いことが分かった。

自動車業界は短期の景気循環的な問題と長期的な脅威を抱えている。

短期的な問題は、昨年の減税効果で自動車が売れた米国ではその反動から今年の販売台数が低迷すると予想されることや中国の経済成長鈍化で車が売れなくなることだ。

実際世界ベースで今年1月の車の販売台数は8%減少した。

長期的な脅威は排ガス規制の強化やライドシェアの拡大である。これらはWSJが述べるところだが、日本のような高齢化社会ではあと数年で車を運転する人が大幅に減少することや「車を運転する楽しみ」よりもスマートフォンなどでゲームを楽しむことを選好する人が増えていることも大きな脅威だ。

株価の動きは自動車業界の憂鬱を先取りしている。過去1年間でS&P500は3.8%上昇したが、自動車メーカー株は7.1%下落した(もっとも今年に入ってからは自動車株が市場平均をアウトパフォームしているが)。

社債市場ではフォードの長期社債の対米国債スプレッドが3.64%になっている。これはフォードがやがて投資適格銘柄から転落する可能性があることを示唆しているようだ。

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自動車は高い消費財である。「クルマをディーラーで買わなくなる日」(桃田 健史著)は「8年程度で買い替えるとして生涯に7台保有。車の価格200万円、年間経費30万円という前提」で生涯の自動車保有コストを3千万円と計算している。

車を持つことがステータスシンボルでなくなった現在、消費者が自家用車を交通手段の一つとして他の移動手段と「裁定的」に選択する場合、車を保有しないという選択が浮かび上がる。このように考える人が増えていることは自動車業界の憂鬱は構造的なものなのだろう。

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