ご存知の方も多い話ですがアメリカの職場には定年はありません。1967年に「年齢差別禁止法」が成立していて、年齢で雇用を差別するのは法律に違反するからです。
ただし年金(Social Security benefits)をフルに受け取ることができる66歳までに退職する人が多いといわれています。
そのアメリカで「70歳まで働こう」と声を上げる老年学研究者が増えています。
キャッチフレーズはAge 70 is the new 65。日本語風にいうと「70歳は今や65歳」というところでしょうか?
老年学研究者やフィナンシャル・アドバイザーがフルタイムであれパートタイムであれ70歳まで働こうと声を大にしているのは、老後の資金手当てが十分できていないシニア層が多いからです。
スタンフォード大学長寿センターのレポートによると「65歳で退職するには25歳から準備を始めるなら所得の10~17%を退職金として積み立てる必要があり、35歳から準備を始めるなら所得の15~20%を退職金として積み立てる必要がある」「しかし実際に25歳~65歳の家計を調査したところ収入の6~8%が退職準備金として積み立てられているに過ぎなかった」ということです。
退職後に備えた資金の準備ができていないので、65歳で退職せずに70歳まで働こうという提案になっている訳です。
年齢による雇用差別が禁止されているアメリカですから制度的に長く働くことは可能でしょうが、反面職業能力がないと簡単に首になる社会ですから、長く働き続けるには「雇用される能力」つまりEmployabilityを維持する必要があります。
Employabilityとは何か?という話は議論の多いところですが、「専門能力」と「資質」に分けた場合、私は意外に重要なものは「資質」ではないか?と考えています。「医師免許」のような国家資格がある場合は「専門能力」は単独で活用することができますが、多くの「専門能力」はある組織の中で色々な人とのかかわりの中で活用されるものです。つまり組織との調和力なくして生かすことができる「専門能力」はそれほどないと考えておいた方が良いかもしれません。
ではどのような「資質」が長く働くために必要なのでしょうか?それは「身体の健全性(耐久力)」「自己制御の能力」あるいは「学び続ける意思」などというものでしょう。
これらの資質は一日にして身につくものではありません。長い時間をかけて自己研鑽して身に着けるものです。
日本でも70歳まで働きたい人は働くことができる社会を作りたいと政府は動き始めていますが、今一つEmployabilityの話まで踏み込まれていないような気がしますね。