エコノミスト誌に今年の各国の実質賃金の伸び率予想がグラフで出ていた。これはヘイという人事コンサルタント会社が雇用主の予測をベースにインフレ率を調整したものである。グラフなので細かい数字まで読みきれないが、概要は以下のとおりだ。
中国 8.2%程度、インド6.2%程度、インドネシア4%後半、ロシア3.5%程度、オーストラリア2.3%程度、イギリス・フランス・ドイツ・米国 1%前半・・・・日本は2%である。賃金の実質成長率は経済成長率と歩調を合わせている。
この数字を見ると収斂仮説を思い出す。収斂仮説の説明は三菱UFJ証券のHPを引用させていただく。「ある条件を満たせば、生活水準の低い国は平均して、豊かな国よりも早く成長し、初期の貧しい時の生活水準に影響を受けず、最終的には先進国の7割から9割の生活水準に収斂していく」というものだ。http://www.sc.mufg.jp/inv_info/ii_report/m_report/pdf/mr20060801.pdf
なおこのレポートを書かれている水野 和夫氏は最近「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るか」という本を出しておられるが、この中にも収斂仮説は出てくる。
それによると日本の近代化がスタートした1870年から近代化が終焉を迎えた1995年の間に日本は2.7%の経済成長を続けたが、英国の成長率は年1.4%であった。今歴史は繰り返し、中国やインドが欧米や日本を上回る経済成長を続け何れの日にか、生活水準は比肩することになるのだろう。
日本について見ると長いスランプの後、漸く2%の賃金の伸びまでこぎつけて来た。もっとも「俺の給料はそんなに伸びないぞ」とおっしゃる向きがあるかもしれない。その人達は停滞産業分野にいる可能性が高い。今産業の停滞分野と成長分野は循環的でなく、構造的なので、停滞分野に留まっていると長期にわたって給料の伸びは期待できない。従ってあなたが若ければ一日でも早く成長分野に転職する方が所得面では有利である。
成長分野のキーワードは、グローバル・アジア・英語である。つまりBRIC’sの様な経済成長力のある地域と関連性が高い仕事をする分野は成長するということだ。ポイントはこれが業種でなく、そのサブディビジョンともいうべき部門単位で起きるということだ。例えば日本の金融業全般は低成長分野だが、「海外での証券運用」とか「クロスボーダーのM&A」などは成長分野である。
業界や企業を一まとめにしてものを見る時代はとっくに終わっている。しかし日本の企業は異なる分野の従事者を一律的に処遇している。これでは高成長分野に従事する人に高い給与を払うことができず、彼等は去っていくのである。
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