WSJにJapan's tantalizing bank dividends mask a world of troubleという記事が出ていた。意訳すると「興味をそそる邦銀の高配当利回りの影に問題山積」というところだろう。
昨日WSJの記事から欧州のマイナス金利問題を紹介した。この2つの記事に共通するテーマは「マイナス金利政策という劇薬による対症療法は銀行を衰弱死に追い込む」というものだ。
一般に金利高は株価にとってマイナス要因であるが、その一つの例外が銀行株だ。昨年米国では政策金利の引き上げが続いたが、その恩恵を受けたのが銀行セクターだった。金利が上昇する過程で、銀行は貸出金利を迅速に引き上げるが、預金金利については緩やかに引き上げることが多い。従って金利上昇は銀行に収益拡大のチャンスを与えるから、金利上昇時は銀行株が上昇する。また正常な経済情勢の中で金利が上昇するのは景気が良い時なので、銀行には貸出を伸ばすチャンスが多いから株価が上昇するとも考えられる。
さてご存知の方も多いと思うが、邦銀株指数の配当利回りは先週4%を超えた。これは1973年以降初めてのことだ。
殆どゼロといっても良い銀行預金にお金を預けるよりは、4%の配当を求めて銀行株を買っても良いと考える人もいるかもしれない(いや、いないか?)が、これは投資資金がある程度目減りしない時の議論である。
邦銀の配当利回りが上昇したのは、株価が下落しているからだ。株価水準を図る一つの指標は株価純資産倍率(PBR)だが、邦銀PBRは0.4まで下がっている。これは株価が解散価値の4割しかないことを意味している。
国内に貸出機会がない邦銀が融資を伸ばしているのは海外だ。メガ3行の海外融資比率は5年間で28%から34%に増えた。
また直接海外融資に取り組む手段に乏しい地銀はローン担保証券を購入している。
このローン担保証券というのは、リスクを外部から測定し難いので一概に危険きわまりないと評価するつもりはないが、業界アナリスト達は厳しい評価を下しているようだ。邦銀株低迷の一つの要因である。
現在の多くの地銀の収益構造は相対的に金利が高かった時の有価証券の遺産やハイリスクのローン担保証券に頼っている状態だ。
マイナス金利が前門の虎とすれば、預金取引を含む銀行取引のインターネット化・モバイル化は後門の狼だ。
以上のことを考えると配当利回り狙いならドコモ株は買うことができても、とても邦銀株は買えないことになる。
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