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山好き金融マン(OB)のブログ
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来春の消費税引き上げは必要と考えるが、その次は?

2013年07月06日 | 政治

今月行われる参院選については、世論調査では与党が過半数の議席を取ると推測されている。だが選挙は水物。自民党としては、選挙で勝利するまで、トリッキーな問題はそっとしておき、勝ちをおさめたいというところだろう。トリッキーな問題の一つには「消費税の引き上げ判断」の問題がある。来年4月から消費税を8%に引き上げるには、今年の秋には引き上げ可否を判断しなければならない。つまり参院選から2ヶ月先には決めないといけない問題だが、安倍首相は、消費税引き上げ判断問題が参院選の争点になることを避けている。

アベノミクスの三本目の矢は構造改革と成長戦略であり、法人税の大幅減税は自民党の選挙公約に入っている。法人税の減税をやりながら、消費税の引き上げ時期を遅らせると財政状況は悪化する。だが法人税の減税を掲げながら,来年4月から消費税を上げるというと、選挙民の不満が噴出しそうだ。

消費税の引き上げには第二四半期(4-6月)の景気判断、GDP成長率などが影響する。最近菅官房長官が「消費税の引き上げ判断には、引き上げにより税収が増えるどうか?」の判断もいると言い始めたのは、選挙を意識した甘味剤かあるいは本音なのか?

消費税を引き上げるべきか、引き上げ時期を延期するべきか?は、世界中のエコノミストの間でも意見は分かれている。WSJが6月下旬にエコノミスト達に行った調査によると、36%が引き上げるべきだといい、引き上げ時期を延期するべきだと主張する人は12%だった。残りの意見は「引き上げ支持寄り」「引き上げ時期延期」が拮抗したということである。

内閣府の調査によると、消費税1%の引き上げはGDP成長率を0.5%引き下げる。消費税2%の引き上げはGDP成長率を1%押し下げるという計算だ。

1997年に消費税を5%に引き上げた時は、GDP成長率は2.7%から0.1%に低下し、また総税収は引き上げ前より減少した。この「事実」が消費税引き上げ据え置き論者の論拠の一つだろう。ただし当時のGDPの急激な鈍化は消費税引き上げの影響ではなく、アジア危機の影響だと主張する経済学者もいる。

専門家の間でも意見の別れる問題だが、私は現在の第2四半期の経済成長率が堅調であれば、予定通りに粛々と引き上げに向かうべきだ、と考えている。理由は「責任ある政治の信頼維持」である。無論補正予算等の景気悪化防止策は必要だろうが、まずは政府がこれ以上の財政悪化に対して毅然たる姿勢を取るということを、市場と国民に示すべきである。

高齢化が進む日本だが、国民負担率(国民所得に対する租税割合)は、欧州先進国に較べてまだ低い。フランス、スウェーデンの国民負担率は約6割、ドイツ、英国は約5割で日本は4割弱だ。社会保障費の割合が日本半分の米国は国民負担率は31%弱と少ない。

日本の社会保障費は今後ますます拡大が予想される。消費税引き上げの前にやるべきことはある、と主張する政党もあるが、精神論は別として国会議員の数を減らした程度で捻出できる金額ではない。むしろ一度消費税を引き上げて、その痛みの中で社会保障のあり方を含めて、議論を深めるべきだろう。国家も家計でも行き詰まるとどこかから借金して凌ぐ、というスタイルでは破滅は近いと考えるべきだはないか?

ただし仮に消費税を引き上げた後、原因は何であれ、景気が大幅に落ち込むと、次の引き上げはハードルが上がる。来年4月に向けて、景気対策の持続が肝心だ。

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