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政治的自殺か名誉の腹切りか

2012年11月22日 | 政治

11月14日の党首討論で野田首相が解散に言及したというニュースはカトマンドゥのホテルでウェブ版の読売新聞を読んで知った。ただし解散に踏み切った背景に関する分析などを詳しく分析した記事を読むこともなく、そして考えることもなくここ一週間ほどバタバタと過ごしていた。

今日FTのJapan's political carousel spins againという記事を読んだ。筆者bylinerはMure Dickieという人。題の意味は「日本の首相交替という回転木馬再び」ということ。

12月16日の総選挙で民主党が大敗することは確実視されているから、野田首相の退任は必至だろう。彼は過去6年間で7番目の首相になる。回転木馬劇の始まりは、2007年9月に安倍晋三元首相がスキャンダルと参院選の敗北が契機で辞任時からだ。もし今回の総選挙で自民党が勝つことがあれば、回転木馬が一周して安倍首相の再登場となる。詳しく調べた訳ではないが、もし首相に再任されと吉田茂以来のことかもしれない。

このような首相(そして閣僚も)がコロコロと変わる回転木馬政治にFTは基本的な疑問を投げかける。

どうして日本は短期間で政治的リーダーを溶融burn throughしてしまうのか?

世界は政治的な温室hothouse育ちの政治家に関心を払うだろうか?

Hothouseには比喩的に「過保護」「ひ弱なもやしっ子」という意味がある。

もやしっ子との関連で傾聴するべきはFTの次の指摘だろう。

Japanese parties are much less disciplined than counterparts in other parliamentary democracies such as the UK.

「日本の政党は英国など他の議会制民主主義国家に比べて規律・統制を欠く」という意味だ。disciplineには「規律を守らせる」という意味の他「自己管理をする」という意味があるが、後に続く「一党の中に貿易自由化に反対する人や支持する人がいる」という文章からすると、規律すなわち党議の拘束力を欠いていると解するべきである。

しかしながら深読みをすると「自制心や自己鍛錬を欠いている」という指摘を含むとも考えられる。

今回の総選挙に各党が掲げる主張を見ると結局のところ、有権者受けの良い玉虫色の主張の羅列なのである。

私が今の日本で一番問題なことは、政治家の玉虫色の主張を聞いている内に多くの国民の価値観が劣化したことだ、と思っている。

「社会保障の水準は下げられたくないが、負担増は嫌だ」「日本からの輸出品の関税は自由化して欲しいが、日本の輸入品には国内弱小産業保護のために関税をかけたい」などというのは、子供がダダをこねているような話だ。ちゃんとした大人は「応分の負担を伴う主張」をするものである。健康を維持したいのであれば、飲食の節制と運動に努める。これがdisciplineである。政治家がdisciplineを欠いているだけでなく、玉虫色のマニフェストをマントラのように聞いている内に国民の規律意識が低下した、というのが今の日本だろう。

さてFTは野田首相の解散宣言を「政治的自殺」という声がある中で、日本の経済団体の中から「名誉の腹切り」という声がある、と結んでいる。

以前から私のブログをお読みの方はご承知だと思うが、私ははるか昔から反民主党であり、今回政界を引退する鳩山由紀夫氏などに特にネガティブな評価を下している。

しかしながら今回の野田首相の解散判断は評価して良い、と考えている。それは首を取られたとか切腹か、といった美学的な判断基準ではない。それは社会保障制度改革国民会議を発足させ、社会保障を選挙の争点から外したことである。社会保障の問題はバラマキ合戦になる選挙の争点に簡単にするべきではないのだ。

社会保障に関する議論がどのように展開されるかはしらないが、基本的なdisciplineを欠かないようにして貰いたいと私は思っている。

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