先週金曜日(10月17日)の米国株式市場は大幅に上昇した(ダウは263ポイント(1.6%)の上昇)。上昇したといっても、1カ月前に較べると、ダウは885ポイント(5.13%)下落している。少し前までは「新しいゴルディロックス経済の到来」などという楽観的な言葉を米紙で見かけたが、今では懐疑的なムードが支配的なようだ。
CNBCに「米国経済が脱線する5つのリスク要因」という記事が出ていた。
5つのリスクとは「世界的な景気減速」「長期金利の上昇リスク」「原油価格の下落とインフレ率の低下」「急速な物価上昇」「株価下落」である。このリスクは日本経済が抱えるリスクと基本的には同じだ。もっともGDPの輸出依存度は米国が10%程度(CNBCの記事による)で、日本は14%程度だから世界経済の鈍化が経済に与える影響は日本の方が大きい。
原油価格とインフレは関係が深い。原油価格の低下は短期的には消費者にプラスに働くが、原油価格の低下が続くと物価上昇率が危険水域に入る可能性がある。キャピタル・エコノミクスのチーフエコノミストによると「インフレ率が1.5%まで落ちても問題はない(8月は1.7%だった)が、もし0.3%まで低下すると問題だ」と述べている。このように物価上昇率が連銀がターゲットする2%より大きく落ち込むリスクを指摘する声がある一方食料品や原油価格の予想外の急上昇懸念を指摘する声もある。
例えば米国の大平原地帯では、何十年ぶりという旱魃が起こり、食肉価格を上昇させている。現在のところ海外からの輸入である程度価格は抑えられているようだが、世界的に異常気象が目立っているので、どこで何が起きるか分らないというリスクはある。
このところの株価下落については「一時的なもので大きな懸念はない」とする声が多いが、エボラ熱の感染やイスラム国問題が持続すると株価が一段と下落するリスクは残っている。株価の大幅な下落は、富裕層の消費マインドを萎縮させ、景気の悪化につながるだろう。
以上のようなリスクは別に先週急に出てきたものではない。株価の急落でそれまで軽視させていたリスクに改めて焦点が当たっただけの話ではある。
さて日本ではこれに加えて私は「小渕経産相の政治資金問題に絡む辞任」としれに続く安倍政権の不安定化や「消費税再引き上げ判断」問題がある。消費税再引き上げに踏み切ると当面の景気を冷やす可能性が高いし、再引き上げを見送ると財政規律の弛緩とみなされ、国債価格が下落(長期金利の上昇)するリスクがある。いずれにせよ株価には悪影響を及ぼす可能性が高い。
日米経済ともリスクを抱えているが、相対的には今の時点では日本の方がリスク要因は多いのではないか?と私は考えている。それが正しいかどうかは市場に聞くしかないが。
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