日本でも少しづつマスコミの話題になってきた米国のNSA(国家安全保障局)の通話記録収集問題だが、取り上げ方によってはバイアスのかかりやすい問題である。インターネットを見ていると、マスコミには「米国秘密裁判所が情報提出命令を出した」という記載が見られるが、これは誤訳ではないか?と私は感じている。対応する原文はThe Nsa has been getting secret court orders to track telehpone calls of millions of Americans・・・・”
で「国家安全保障局は(テロリズムを査察するため)数百万人のアメリカ人の電話を追跡調査するべしという裁判所の秘密命令を得ている」ということなのだが、secret court ordersを「秘密裁判所の命令」と訳すか「内密の裁判所の命令」と訳すかで、読み手の印象は随分違ってくると思われる。
私は後者の立場で「内密の裁判所の命令」と訳したが、検討過程で参考になったのは赤旗のネット版で「盗聴を行うには対外情報監視裁判所という特別な裁判所の許可が必要」という解説である。対外情報監視裁判所を秘密裁判所とすると前者の訳も成り立つが、個人的には少し筋が悪いと考えている。「秘密裁判所」という言葉に私は胡散臭さを感じている。
一方過半数のアメリカ人がNSAによる一般市民の情報の監視を受け入れている、というような報道もミスリードしやすい。
確かにピューリサーチが約千人のアメリカ人に調査をしたところでは、「62%のアメリカ人はたとえプライバシーの侵害があるにせよ、政府がテロの兆候を査察することの方が重要」と述べ、「プライバシーの侵害の方が重要」と応える34%を圧倒している。
この調査結果は先週辺りからマスコミを賑わせているNSAの内部告発事件とはあまり関係がない。ピューリサーチがAMCニュースと共同で2006年1月に調査を行なって以来ほとんど変化がなかった。
ただ「通話記録の追跡」と「電子メールのモニターリング」では、国民の支持率が違っている。通話記録の追跡については、56%の国民が支持し、反対者は41%だ。一方電子メールのモニターリングについては、支持者は45%にとどまり、52%は反対する。
何故通話はテロ防止のために治安当局から追跡されてもOKで、電子メールは同様の目的でも否定されるのか?
ピューリサーチの調査によると、若年層はテロ防止よりプライバシーの侵害を懸念する。50歳以上~64歳の人の67%がテロ防止を優先するが、18歳~29歳ではテロ防止優先は51%にとどまり、プライバシー優先が45%と迫ってくる。若者のプライバシーは電話よりメールに依存するから、メールはよりのぞかれたくない!というのが若者の主張だろうか?
他国の世論調査結果を正しく読むには難しい、と感じた次第である。
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