金融そして時々山

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サミットが福田内閣の退場記念?

2008年05月02日 | 政治

今日(5月2日)の日経新聞朝刊は福田内閣の支持率が21%に下落したと淡々と記事を書いている。ガソリン・高齢者医療の影響だというだけで少しも面白くない。FTにも福田内閣の支持率下落という記事が出ていたが、こちらは内容とともに文章も大変面白いから紹介しよう。

福田内閣は重要な連休期間中にガソリン税率を引き上げ人気を落とすリスクを犯した。連休中にガソリン税を引き上げるのはザックというと英国の首相が12月24日(クリスマスイブ)にワインと七面鳥の値段を倍にするようなものだ。

このワインと七面鳥のたとえが面白い。ちょっと乱暴な気もするが。

FTは「福田首相は親しい同僚に前任者の安倍首相より一日でも長く政権の座にいたいと語った」という噂があると書く。噂があるは原文ではRumor has it that・・、なお余談だが「噂がある」はRumor says とかThere is a rumorとも言う。FTほどの新聞が情報源を示さないで「噂がある」などと書くのはどうか?と思うが、福田氏の心境はそんなところだろう。だが福田首相の在任期間は前任者の366日を越える可能性は低い。

FTは北海道大学の山口教授の「福田政権の政治生命はほとんど終わった。サミットは彼のフェアウエル(さよなら)イベントとなる可能性が極めて高い」という意見を紹介している。

FTの記事の面白さは、気のきいた比喩や大胆な予測にのみあるのではない。むしろ何故安倍・福田そして可能性としてはその後継者の短命内閣が続くのか?という本質に迫るところにある。

コロンビア大学の日本専門家ゲーリー・カーティス氏は「小泉内閣の支持率の高さはその政策よりもスタイルによるところが大きい。今その反動が出ている」と言う。

日本は6年間にわたる派手ではないが堅調な経済成長を続けてきた。しかし物価の上昇が顕著になってきても、給料はほとんど上がらない、年金や公的保険の給付はカットされるが、掛け金は上昇するという状況下、国民の不満が鬱積しているということだ。

小泉首相は「痛みに耐えて国を良くしよう」と訴えて高い支持率を得ていた。しかし小泉劇場のマジックが終わった後、「痛みに耐えたところで何も良くならん」という反動が前回の参院選挙における民主党の大勝利につながったということなのだ。福田内閣の不人気はこの延長線上にある。もっともクリスマスイブにワインの値上げをするような手腕のまずさもあるのだが・・・・。

だがもう一歩突っ込んで考えると、福田首相の後を誰が襲ってもなまじなことでは人気を持続させることは難しいだろう。

今問題になっている地方や中小企業の疲弊あるいは年金・医療等の問題は総て過去の借金を払っているかあるいは経済のグローバル化の結果なのである。

日本は高度成長期に「少子高齢化策」をとり、若年労働層を首都圏に集中させ、地方の産業と農業を疲弊させながら、道路建設を中心に税金をばら撒いてきた。また非効率な産業も様々な参入障壁で守られてきた。それらが今総て逆回転に入っているのである。さらに気がつくと世界的なエネルギー・食料価格の上昇が迫っている。

今本当に必要なことは、これらの難しい問題に正面から取り組むことなのだろう。例えば農業を抜本的に間直し、食糧自給率を高める・・・などということが必要だ。本格的な高齢化対策としては「定年年齢の引き上げや廃止」を行わなければならない。ところが今の自民党や民主党にはそのようなビジョンはないと私は考えている。

暫くの間、90年代のように内閣がコロコロかわる時代を経て国民がうんざりするまでの間、長期的な問題に取り組む強い政権は誕生しないのだろうか?

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