昨日(10月19日)ワイフと黒木華・樹木希林主演の「日日是好日」を見に行った。
典子(黒木華)という若い女性が茶道の師匠(樹木希林)について茶道を学び、20数年かけて自分の居場所を見つけていくという話だ。
テーマはまさに「日日是好日」
日日是好日といっても毎日楽しいことがある訳ではない。典子も就職試験での不採用、失恋、父親の突然の死などいくつかの不幸に出会いながら、それを乗り越えていく。その時典子を支えてくれたのが日日是好日という言葉だ。
日日是好日という言葉は「その時その時の環境をありのままに受け止めてその時その時を精一杯生きることで日々が生きてくる」という意味である。
晴れて天気の良い日は楽しい。好日である。しかし晴天だけが続くと旱魃になり植物も人間も生きていくことはできない。雨も嵐もまた自然の大切な恵みなのである。
映画の終わり近くで、お茶席で激しい雨音を聞くシーンが出てくる。その時床の間にかかっている軸が「聴雨」という言葉だった。
雨もまた楽しむ心境を指すのか?と映画を観ている時は思った。
帰宅後調べてみると「聴雨寒更盡 開門落葉多」という唐時代の詩が出典だということがわかった。
秋の夜夜もすがら雨を音を聞きながら過ごした。翌朝門を開けると落ち葉が一面に積もっていた。雨の音と思ったのは落ち葉の落ちる音だったという意味だ。
元の詩の深い解釈は別として、「聴雨」という言葉は心に留めておきたいと思った。
私のような山登り愛好者は登山中に雨に合うことがしばしばある。特に昨今は地球温暖化の影響で想定外の激しい雨に合うことが多くなっている。雨の日の登山は楽しいものではない。体は冷えるし体力の消耗も大きいからだ。
更に気が滅入ってくるとますます楽しくなくなり疲れも増すようだ。
そんな時「聴雨」という言葉を思い出してみたいと思う。
日日是好日も聴雨も禅語である。禅の教えは難しく考えると難しくなるが、一言で言うと「その場その場を精一杯生きる」ということに尽きている。
山登りと禅が一如となったような「歩歩是道場」という禅語がある。元々の意味は一歩一歩の歩きそのものが仏道修行の場という意味だろうが、登山的には一歩一歩の登りを大切に倦まず続けることが山頂に至る道だということを意味している。
晴れた日は景色を楽しみ、雨の日は雨の音を楽しみ、雪の日は風に舞う雪の華を楽しむ心境になれば登山は更に楽しくなるだろう。
そして人生もまた。
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