金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米国の中古住宅価格11年振りに下落

2006年09月26日 | 社会・経済

昨日(9月25日)の全米不動産協会の発表によると、先月も中古住宅の販売件数は減少し、中古住宅の中位価格は1995年以来初めて下落した。このニュース自体は日本の新聞(今のところネット版)に出ているので、特段私のブログに書く程の話ではない。ただ次の二つの点に興味があったのでちょっとウンチクを述べてみた。

まず一つ目はこの販売価格の下落を底入れ時期と見るかどうかという点。これによって今後の景気判断が変わってくる。次に日本とアメリカの住宅事情の違いからくる訳語の違和感の問題だ。

まずウオール・ストリート・ジャーナルにそって不動産協会の発表のポイントをまとめておく。

  • 8月の中古住宅販売件数は年率換算630万戸で、7月比0.5%前年同月比12.6%の下落。販売の落ち込みが激しかったのは集合住宅だった。また価格の落ち方も集合住宅の方が戸建よりも大きい。
  • 中古住宅の中位価格は22.5万ドルで、前年同月比1.7%の下落。前年同月比で価格が下落したのは、1995年以降初めてのこと。またこの下落率はデータの収集を行なっている約40年の中で2番目の下落幅である。
  • エコノミスト達は以前から売上が低下していることと買い手の自信が萎んでいることで、価格の下落を予想していた。不動産協会のチーフエコノミストは、価格の下落で住宅が買いやすくなるので販売促進につながり在庫も減少すると言っている。「これは売り手市場から買い手市場への転換点だ。住宅価格が余りに急速に高くなりすぎたので修正が必要だった」と同氏は言う。
  • しかし価格の下落はもう一方の面を持つ。消費者は自宅の価値が減少すると富が減少したと感じ、財・サービスの消費を減少させる。JPモルガンチェースのエコノミスト・アフメド氏は「これは消費者に対するリスクであることを認めなければいけない」と言う。しかし短期的にはガソリン価格の下落が住宅価格の下落を相殺すると同氏は言う。
  • なお複数のエコノミスト達が相当数の買い手が市場に戻ってくるには引き続き住宅価格が下落することが必要だと言っている。

さて訳語と言うか慣行の違いに関する問題であるが、第一番目が中古住宅という言い方。英語ではExisting という言い方をする。つまり現存する住宅である。日本で中古というとぱっとしたイメージがないが、アメリカでは新規住宅着工件数よりも中古住宅の販売件数の方がはるかに多い。因みに8月に建築許可を受けた個人向け住宅戸数は172万2千戸で前年同月より21.9%減少している。

従って市場により大きな影響を与えるのは新規住宅着工件数(Housing startsという)よりも中古住宅(嫌な訳なのだが適訳が見つからない)の販売動向であると思われるが、新規住宅着工件数の方がより景気動向判断の上で先行性が高いと言われている。

次に住宅価格の下落がどうしてアメリカ人の消費動向にこれ程敏感に影響を与えるかというと多くの人がホームエクイティローンと呼ばれる第二抵当権ローンを借りて消費や投資に利用しているからである。

話はいきなり飛ぶが、日本でも大都市圏を中心にようやく地価が安定してきた。住宅価格の下落時には、住宅担保の消費者向け融資はリスキーなものだったかもしれないが、そろそろ大手銀行でもホームエクイティローンに積極的に対応しても良いのではないだろうか?

それとに日本でも今後住宅の耐久性をもっともっと伸ばすことを考えなくてはいけないだろう。20年程度で住み難くなる家を作る時代は過ぎた。高齢化と世界的な資源不足、環境への配慮等といったことから今力を入れなければならないのは、物理的・機能的に耐久性の高い住宅の建築だろう。

小さな新聞記事が色々なことを教えてくれるものだ。

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金はきれいに使うもの

2006年09月25日 | うんちく・小ネタ

今日(9月25日)の日経新聞朝刊のインタビュー記事に作家 加藤 廣さんの話が出ていた。ポイントは次のとおりだ。

  • 清貧という言葉は好きではない。豊かな人も清く生きろという意味なら「清富」というべきだ。お金もうけは悪くないと思う。ただ、使える分以上はため込まないのが基本だ。
  • 「清富の思想」で大事なことは「お金があっても使うときはには、社会の役に立つようにきれいに使うことだ」
  • キリスト教の世界では金持ちが天国に行くのはラクダが針の穴を通るより難しいという教えが浸透している。大病すればわかるだろうが、お金は来世まで持っていけない。もうけたお金をきれいに使うことを日本人は忘れすぎている。

まったくその通りである。人間の欲望の内、食欲とか性欲といった動物本能的欲望は一度満たされると満足されるものだ。腹一杯になったライオンは草食動物が近くを通っても襲うことはない。

しかし金銭欲とか権力欲といった人間の欲望には際限がない。何故なら自然にブレーキをかける仕組みがないからだ。キリスト教にしろ仏教にしろ世界的な宗教の一つの役割はこの際限のない欲望に歯止めをかけることである。若い時から理屈抜きにこれらの宗教の教えを学び、貪欲さを戒めることが必要なのである。

戦後日本は信教の自由という旗印の下、子供達が宗教教育を受ける機会がなくなった。いや子供達だけでなく大人もお金を稼ぐ意味と使う意味を知らないままに老後を迎える様になっている。今必要なことは「如何にお金を増やすか」という投資家教育よりも「何のためにお金を増やすか」という人生教育の方かもしれない。死のその時「お金より大事なものがあった・・」などと後悔しないためにも。

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子の権現から竹寺へ

2006年09月24日 | まち歩き

9月24日(日曜日)は素晴らしい快晴だった。午前7時に目を覚まし「この天気を利用しない手はない」と思い、奥武蔵の子の権現に行くことにする。子の権現付近は何回も歩いているのだが、最近親父が膝を痛めているので子の権現でお守りを貰うことを少し前から考えていたのだ。さて西武線の時刻を調べると8時半前に所沢に行かないと都合の良い電車がなさそうなので、アタフタと朝飯を食べ花小金井駅まで自転車を飛ばしていく。予定の秩父行き快速に乗り西吾野駅へ向かった。この時期は高麗の巾着田の曼珠沙華が人気で電車は混んでいたが、ほとんどの人は高麗駅で降りた。西吾野駅には9時20分頃到着。降りた人は数名である。

国道を少し飯能の方へ戻り橋を渡って、子の権現への道を辿ると谷沿いの道にシュウカイドウが沢山さいていた。

Shuukaidou

栗も実をつけていた。木の上でカサカサ音がするので目を凝らしえ見るとリスがいた。

谷沿いに立派なお墓がぽつんぽつんと建っている。

鶏頭の 花暗く燃ゆ 山墓に (北の旅人)

お彼岸なので新しいお花が供えてあった。

Kuri

気の早いリスは冬眠に向けて木の実を集め始めているのだろうか?リスの活動は早い年は冬の到来が早いというが今年はどうなのだろうか?(写真にはリスは写っていません)

10時30分子の権現到着。手元のハイキングガイドでは西吾野駅から子の権現は1時間40分なので30分も早く着いてしまったことになる。

Nenogonngennkuri

写真は子の権現の庫裏だ。ベルを押すと中学生と見える女の子が出てきてお札を分けてくれた。小さなスリッパが着いた足腰のお守りを親父のために頂いた。お守りに直接的な効果があるかどうかは知らないが、親父が「息子が自分のことを気にかけている」と思い治療に励む程度の効果はあるだろう。このお寺の御本尊は十一面観音である。十一面観音の信仰は古いが寺の縁起によると西暦911年の建立である。秩父地方は日本最初の銅銭・和同開珎の元になった銅を献上した歴史もあるので、昔から発達していたことが分る。

それにしても911年の建立とは古いものである。

Nenogonhondou

本堂は今造りで新しそうだ。境内には大きな鉄(かね)の草鞋が奉納されていた。

Kanenowaraji

子の権現から「関東ふれあいの道」にもなっている山道を辿って竹寺に向かった。竹寺到着は11時25分。山道を小走りで辿ったのでコースタイムの半分で着いてしまった。

竹寺は正式には天王山八王子というが、神仏混淆の姿を残す珍しい存在である。本堂は牛頭天王をお祀しているがお堂の裏には二本の御神木が立っている。またお堂への道には鳥居が並んでいる。

Takedera1

Takedera2

竹寺から中沢のバス停まで舗装道路を歩いた。中沢のバス停についてのは12時15分である。次のバスは1時15分で1時間の待ち時間があった。バス停でオニギリを食べた後、バス道にそってバス停4つ分程歩いてみた。道は小さな渓谷に沿っていて、道端にはヤマメを放流しているという立て札が立っていたが、川を見ても魚影はほとんどなかった。1時20分にバスに乗り2時前に飯能に到着。こうして初秋の奥武蔵散策は終わったが、カラッとして実に気持ちの良いハイキングだった。

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デッド取引が企業を変える

2006年09月23日 | 金融

昨日日経新聞にイオンが期間50年のハイブリッド債券を発行するという記事が出ていた。イオンのホームページによると当該債券は、機関投資家を対象とした劣後債で発行総額の半分程度が資本として認識されるということだ。日本では銀行は資本増強のため劣後債券を沢山発行してきたが事業会社がこのよなハイブリッド債券を発行するのは始めてである。

さてこの事実から透けて見えるものは、日本でも企業の資金調達が株式や公募社債から私募債での資金調達へのシフトという世界的な傾向に歩調を合わせる兆しが出たのではないか?ということだ。そこで最近のエコノミスト誌の情報を元に世界的なデッド(債務)市場の動きを見てみよう。

  • デッド市場の主な牽引車はバイアウト・ファンドである。バイアウト・ファンドの代表格のプライベート・エクイティ・ファンドは2006年上期に3千億ドルの資金調達を行なった。もしこのペースで彼等が資金調達を続けると理論的には、2006年に彼等は米国ナスダック上場会社の約5分の1あるいは英国FTSE100のほぼ4分の1を買収することができる資金を集めることができる。
  • デッド・ブームの主役の一人シティグループによると、特に英国ではバイアウト、外資による買収、自社株買いにより新規に発行される株式よりも減少する株式の方が多くなっている。なお今年は欧州の株式市場で過去20年以上の間で初めて英国と同様に株式数が減少している。
  • 企業は買収を避けるため、借入金を増やし自社株買入を進めている。国際決済銀行によれば、第2四半期の自社株買入額は1,170億ドルに達している。因みに昨年の四半期あたり自社株買入額は87億ドルだった。
  • 2003年以降税引後のデッドファイナンスのコストは、エクイティファイナンスのコストを下回っている。コストの高いハイ・イールド・デッドでもエクイティファイナンスのコストより低くなっている。因みにエコノミスト誌のグラフによると、米国におけるエクイティ・ファイナンスのコストは現在9%程度、ハイ・イールド・デッドのコストは6%弱、投資適格デッドで4%をわずかに下回るレベルになっている。
  • 今や銀行だけが居心地のよいデッドファイナンスを独占しているのではない。数年にわたる低金利と豊富な流動性により、投資家達はそれがより高いリスクを意味するものであっても、より利回りの高い資産を追い求めている。このことはヘッジ・ファンドのようなファンドが銀行から資金を借りてローン市場に参入していることを意味する。
  • また給付債務に合わせるため年金基金が長期資産の保有を望む結果、彼等はクレジット市場に参加している。投資信託や保険会社もポートフォリオを分散させ、リターンを少しでも向上させるためローン市場に参入してきている。米国では今年前半の総てのレバレッジド・ローンの3分の2を年金基金、投資信託、保険会社が購入している。彼等はローン・シンジケーション市場で銀行に取って代わっている。因みに7年前は年金基金、投資信託、保険会社のシェアは45%だった。欧州でも同じ傾向で1999年にはローン・シンジケーション市場において年金基金、投資信託、保険会社は殆どシェアを持っていなかったが、今年6月末時点で彼等のシェアは45%になっている。
  • このようなディールを牽引しているのは、ゴールドマン・ザックスのようなバイアウトの専門家である。最近の大型の買収ファイナンスとしては、スペインの建設会社フェロビアルがゴールドマンを主幹事として英国の空港運営会社最大手のBAAを買収することとなった。ディール総額は300億ドルである。
  • 安くて流動性の高いファイナンスにより企業はバランスシートをより効率的に使うことができ、レバレッジをかけることで株主へのリターンを高め、経営層は利益とキャッシュフローに集中することが可能になる。また貸出が増加しているにもかかわらず、銀行側も安全装置となる資本の厚みを増している。
  • しかし他方デッドとクレジット・デリバティブの市場が認識の範囲を超えて成長しているため、規制当局はこれらの複雑な金融商品が次の金融危機の種になるのではないかという懸念を持っている。
  • クレジット市場は過去10年間の3つの大きなトレンドの牽引車である。まず最初に企業は株式や債券の発行ではなく、私募のローンを通じてより多くの資金調達を行なっている。私募取引は規制当局や通常の投資家が見張ることはより困難である。次に貸出が規制業種である銀行以外の業種例えばヘッジファンド等により行なわれることが増えていることである。これは特にクレジット・デリバティブ取引において顕著である。三番目はこの資金はフェロビアルのような公開企業も使うことができるが大部分は公開企業のレバレッジド・バイアウトに使われる。つまり企業の非上場化のために使われるのである。
  • メリルリンチによれば欧州のレバレッジド・ローン市場は既にジャンクボンドの市場より大きくなっている。米国ではレバレッジド・ローンの新規実行額はハイ・イールド債券の発行ペースよりも早い勢いで伸びている。ただし規模自体はまだ小さいが。レバレッジド・ローンには第二抵当権ローンを含む。(筆者注。イオンのハイブリッド債もこのカテゴリーに入ると考えられる)これは変動利付債で安全性は劣後するが、高いリターンが得られる。もっとも信用サイクルが悪化した場合、これらの債券の流動性がどの程度あるのかは誰も分らない。
  • 世界的に見てレバレッジド・ローンやよりシニアなローンを含むシンジケーション・ローン市場は公募債や株式の市場より早い速度で成長している。デーロジックというデータ提供会社によると、昨年の世界ベースの新株発行額は6千億ドルでこれはピーク時の2000年より少しすくない。また公募社債の発行額は2000年より少し多く、6,850億ドルであった。ローンの金額は同じ時期に2.3兆ドルから3.5兆ドルに拡大している。

このような世界的な流れの中で日本のローン市場を考えてみよう。まず商業用不動産のキャッシュフローを元利金支払源資とするノン・リコース・ローンが拡大している。またソフトバンクによるボーダーフォン買収のような大型バイアウト・ファイナンスも出てきている。また究極の買収防衛対策である非公開化つまりプライベート・エクイティによる買収ファイナンス等も活発化しそうだ。

そこで必要となるスキルは単なる伝統的な与信スキルではなく、将来キャッシュフローの的確な予測や様々なリスク・アペタイトを持つ投資家にリスク特性の異なる様々なローンを販売するといった極めて投資銀行的なスキルが要求される。

これから日本のデッド市場も漸く面白い時代に入っていくだろう。そこで勝者となるのは大手邦銀銀行なのか米系の投資銀行か?あるいはそれ以外の機関投資家なのか?

なおこの記事を掲載した翌日(9月24日)日経新聞朝刊に以下のような記事が出ていた。備忘のためポイントを記録しておく。

  • 日本で外資系金融機関が協調融資(シンジケーションローン)業務を拡大している。外資のシェアは前年同期に比べて、5.4%増え13.6%となった。
  • 外資ではシティグループが4.7%で最大のシェア、ゴールドマンが2.1%でこれに続く。
  • 今年前半の日本のシンジケーションローン金額は1,193億ドル。協調融資は市場拡大が見込まれることや、金融機関にとって手数料収入が得られることを背景に、主幹事獲得競争が激化している。外資の他地方銀行が地元企業向けに主幹事業務を務めるケースも増えている。
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総持寺の白花曼珠沙華

2006年09月23日 | まち歩き

田無駅の北側に総持寺という大きなお寺があるが、その入り口に白花曼珠沙華が咲いている。

Siromannjyu

曼珠沙華は普通赤いものだが、白花曼珠沙華は園芸種として品種改良されたものということだ。曼珠沙華は日本では余り縁起が良い花とは思われていないが西洋ではそのようなことはなく園芸種が開発されているということだ。そういえば近所のスーパーの店先で鉢植えの赤い曼珠沙華がライコリスという名前で売られていた。ライコリスは曼珠沙華のLycoris Radiataから来ている。曼珠沙華を死人花とか地獄花と呼ぶようなことはなくなるのかもしれない。

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