昨日(9月25日)の全米不動産協会の発表によると、先月も中古住宅の販売件数は減少し、中古住宅の中位価格は1995年以来初めて下落した。このニュース自体は日本の新聞(今のところネット版)に出ているので、特段私のブログに書く程の話ではない。ただ次の二つの点に興味があったのでちょっとウンチクを述べてみた。
まず一つ目はこの販売価格の下落を底入れ時期と見るかどうかという点。これによって今後の景気判断が変わってくる。次に日本とアメリカの住宅事情の違いからくる訳語の違和感の問題だ。
まずウオール・ストリート・ジャーナルにそって不動産協会の発表のポイントをまとめておく。
- 8月の中古住宅販売件数は年率換算630万戸で、7月比0.5%前年同月比12.6%の下落。販売の落ち込みが激しかったのは集合住宅だった。また価格の落ち方も集合住宅の方が戸建よりも大きい。
- 中古住宅の中位価格は22.5万ドルで、前年同月比1.7%の下落。前年同月比で価格が下落したのは、1995年以降初めてのこと。またこの下落率はデータの収集を行なっている約40年の中で2番目の下落幅である。
- エコノミスト達は以前から売上が低下していることと買い手の自信が萎んでいることで、価格の下落を予想していた。不動産協会のチーフエコノミストは、価格の下落で住宅が買いやすくなるので販売促進につながり在庫も減少すると言っている。「これは売り手市場から買い手市場への転換点だ。住宅価格が余りに急速に高くなりすぎたので修正が必要だった」と同氏は言う。
- しかし価格の下落はもう一方の面を持つ。消費者は自宅の価値が減少すると富が減少したと感じ、財・サービスの消費を減少させる。JPモルガンチェースのエコノミスト・アフメド氏は「これは消費者に対するリスクであることを認めなければいけない」と言う。しかし短期的にはガソリン価格の下落が住宅価格の下落を相殺すると同氏は言う。
- なお複数のエコノミスト達が相当数の買い手が市場に戻ってくるには引き続き住宅価格が下落することが必要だと言っている。
さて訳語と言うか慣行の違いに関する問題であるが、第一番目が中古住宅という言い方。英語ではExisting という言い方をする。つまり現存する住宅である。日本で中古というとぱっとしたイメージがないが、アメリカでは新規住宅着工件数よりも中古住宅の販売件数の方がはるかに多い。因みに8月に建築許可を受けた個人向け住宅戸数は172万2千戸で前年同月より21.9%減少している。
従って市場により大きな影響を与えるのは新規住宅着工件数(Housing startsという)よりも中古住宅(嫌な訳なのだが適訳が見つからない)の販売動向であると思われるが、新規住宅着工件数の方がより景気動向判断の上で先行性が高いと言われている。
次に住宅価格の下落がどうしてアメリカ人の消費動向にこれ程敏感に影響を与えるかというと多くの人がホームエクイティローンと呼ばれる第二抵当権ローンを借りて消費や投資に利用しているからである。
話はいきなり飛ぶが、日本でも大都市圏を中心にようやく地価が安定してきた。住宅価格の下落時には、住宅担保の消費者向け融資はリスキーなものだったかもしれないが、そろそろ大手銀行でもホームエクイティローンに積極的に対応しても良いのではないだろうか?
それとに日本でも今後住宅の耐久性をもっともっと伸ばすことを考えなくてはいけないだろう。20年程度で住み難くなる家を作る時代は過ぎた。高齢化と世界的な資源不足、環境への配慮等といったことから今力を入れなければならないのは、物理的・機能的に耐久性の高い住宅の建築だろう。
小さな新聞記事が色々なことを教えてくれるものだ。