金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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破産法成立で中国の銀行はポジティブ

2006年09月05日 | 株式

中国では8月27日全国人民大会で企業破産法が採択された。これは94年から12年がかりで検討されてきたものだ。

これまで企業が破産した場合、給与等無担保の労働債権の清算が優先され一般債権者が担保としているは案企業の資産の中から清算が行なわれてきたが、今後は従業員を特別扱いせず、債権者とのバランスをとって清算手続きを進めることが規定された。これは外資の対中国投資促進を配慮した対応である。

ウオール・ストリート・ジャーナルは企業破産法の制定で中国の銀行株に上昇余地がでると報じている。ポイントは次のとおりだ。

  • 企業破産法は債権者の破綻企業に対する債権により強いサポートを与えているし、企業破産手続きを初めて正式に定めたものだ。
  • 中国の銀行株は既にきわめて高い水準で取引されているので、企業破産法の制定で更に買いを呼ぶことはないだろう。しかし銀行のシステム的な問題を改善することで、高いバリュエーションを支えることになる可能性は高い。
  • 中国の5台銀行の内3つは株式公開されている。5月に新規上場した中国銀行はPER21倍、中国建設銀行は16倍、中国交通銀行は19倍である。これは米国の金融株が2006年の予想利益の12倍程度、香港の銀行株が15倍程度で取引されているのに比べ相当高い。
  • 中国の上場銀行のバランスシートは数年前に較べて格段に健全化しているが、これは与信プロセスが改善したというよりは、政府が巨額の資本注入を行なったことによるものだ。そして中国の銀行システムの健全性については疑問が残る。
  • S&Pは2005年末に、中国の不良債権比率は21-25%と推定している。個別の銀行は不良債権比率の改善に長足の進歩を遂げている。JPモルガンの推定では中国では個人ローンは10%で、企業与信が太宗を占めるので銀行貸出は景気のサイクルの影響を受け易い。
  • 債権回収の実績は、中国アセットマネジメント社(不良債権回収の国家機関)が1,760億米ドル相当の不良債権の回収を行った時の回収率は20%だった。最近の回収率は30%に上昇している。中国の新しい企業破産法は回収率を高め、グローバルスタンダードの70%に近づける効果を持つだろう。

中国の企業破産法制定は歓迎するべき話であるが、実際に機能するかどうかはもう少し様子を見る必要があるだろう。なお投資という観点からは私は香港の銀行をちょっとピックアップしてみた。中国の銀行はまだまだ内情が分からないというのが私の見方である。

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