栃東関引退。寂しい。
好きなお相撲さんでした。せっかく大関になっても成績がふるわず陥落したり、歯がゆい思いもしましたが、顎を引き、背中を丸めて押っつけて出る相撲が決まった時の強さは、現役力士では例を見ませんでした。
「押っつけ」は、手元の本では次のように説明されています。
- 相手の差し手を封じるために、てのひらからヒジまで使って、下から上へしぼるようにおしつけるか、差し手のヒジをつかんでねじり上げること。 ――「日本相撲用語・隠語事典」景山忠弘/別冊歴史読本『図説「日本相撲史」総覧』(新人物往来社)
栃東関の押っつけは、どうしてあんなにまで強いのか?
私が勝手に想像するには、押っつけで力が集中するところは相手の重心にほぼ一致するんじゃないでしょうか。そこを斜め上に押すので、体全体が一気に持ち上がる。もっとも効率の良い力の集中の仕方といえるのでは。
小兵でありながら、強い時の栃東関が怪力の持ち主のように見えたのは、この効率的な力の使い方によるものではなかったでしょうか。
相撲の上手さを味わわせてくれるお相撲さんでしたが、もともとは器用なたちではなかったとか。押っつけへのこだわりが不器用さをはね返し、味のある大関への道を開いたのでしょう。
これからは後進に得意の押っつけを伝授してやってください。お疲れさまでした。