惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

東京大空襲と半村さん

2007-05-23 20:58:11 | 本と雑誌
 KAWADE夢ムック『文藝別冊[総特集]半村良』は、半村さんを知る人のエッセイや評論などの他に、半村さん自身の作品も収録されている。
 その中に句集があり、全部で31句(これがお詠みになったすべて?)。で、次の一句を見て「ギャッ!」といいました。
桔梗散って残りの菊のふてぶてし
 半村さんの真骨頂というべきでしょうか。

 気になったのは、幼かった半村さんが東京大空襲を体験したのかどうか、という点。
 島内景二さんの書かれた「伝奇のリアリティ」という文章には次のようにある――

 昭和八年生まれの半村良は、奥能登に疎開したため、本人は直接には大空襲に巻き込まれなかった。
 ところが、野村芳夫さんは「半村良小伝」で次のように記している――
 しかし、終戦まで疎開を続けることなく東京にもどった半村は、小学校五年生にして地獄を見ることになる。「翌二十年三月九日から十日にけて、私はあの東京大空襲で焼け焦げる場所のどまん中にいたのだ。」(『小説新潮』1989年3月号「雀と玩具」)
 ご本人がこう書いている以上、空襲を体験したと考える方が確かなのでしょうね。
 巻末の「略年譜」には――
1945年 小学五年、まだ戦中の東京に戻る。
 3月9日以前に東京に戻っていれば、空襲に遇われているはず。やはり、大空襲を体験しているのでしょう。1冊の本なので確認、統一して欲しいところでした。

 しかし、全体としては半村良という作家を振り返るよい刺激になりました。誰かが評伝を書かねばなるまいと思うのですが……。