妙なものを読んだなあ、というのが正直な感想。ウェン・スペンサー『ようこそ女たちの王国へ』(赤尾秀子訳、ハヤカワ文庫SF)のことです。
設定された舞台は男が極端に少なく、逆に女はやたらにたくさん生まれる社会で、一夫多妻制。希少価値のある男子は家の財産として、女家族たちにしっかりと守られている。戦争や政治、商売、農業など、世の中を動かす仕事はすべて女性が担当している。男は家庭にいて、もっぱら子孫を残す仕事(セックス)に追われているらしい。結婚は、他家の姉妹のもとへ男が売られてゆく形をとる。婿どのは、嫁いだ先の姉妹全員を平等に相手にして満足させなければならない。
我々の社会から見ると、相当にグロテスクですよねえ。しかし、男女比が極端に大きいとこうなる可能性もあるのでしょう。
こういう実験的な社会状況のもとで、ストーリーはロマンティックな冒険アクションの形をとっています。面白いのだけど、なんだかムズムズする。女性が欲望を全開にして、男を値踏みし、猛然とアタックする様子を、男の私が読んでいいのかどうかという気がしてくるのです。「男子禁制」とか書いておいてくれた方が良かったかも。
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