惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

『扉をたたく人』

2013-02-26 21:06:27 | 映画
 2008年のアメリカ映画『扉をたたく人』(監督:トム・マッカーシー、主演:リチャード・ジェンキンス)をテレビ録画で観ました。ちょっとユーモラスで、しかし大変に苦い味わいの佳品。

 原題は『The Visitor』つまり「訪問者」。邦題は少し違えてあるようでいて、重なり合っている部分もあり、結構いい線いってるかも。
 アフリカの太鼓(ジャンベ)が重要な役割を果たすので「たたく」という動詞を使ったのは巧み。ラスト近くで、実際に扉をたたくシーンがあるのも、このタイトルにした理由かもしれません。

 でも、原題の「訪問者」も捨てがたい気がするのは、社会的に広い意味合いが込められているように思えるから。
 アメリカという国への異国からの訪問者が、9.11以降、どのような目で見られているか、どのように扱われているのかという問いかけが、この映画にはあるのです。

 そういう意味で、排外的になり、「愛国心」が強調されるようになったアメリカを描いたコリイ・ドクトロウの青春SF『リトル・ブラザー』を思い出しました。
 『扉をたたく人』は老人の苦いラブロマンスを扱っていますが、老若ともに辛い思いを強いられている側面が、9.11以後のアメリカにはあるのかもしれません。