――という言葉は、
日本SF作家クラブ50周年記念行事の統一テーマ。
同クラブの会長である瀬名さんが○○科学館だとか出版社など30もの会社、団体を回って「50周年記念行事を一緒にやりませんか」と訴えかけた際に、何かテーマが必要だということで、古参会員の門倉純一さんが捻り出したのだそうです。
昨日のジュンク堂池袋本店での瀬名さんのトークイヴェントは、この言葉を巡っての1時間あまりとなりました。
未来のビジョンを語ることは、かつてはSF作家の役割で、小松左京さんはそういった面での業績を上げたが、今のSF界ではいなくなった――と「未来とSF」に関する話題を始めた瀬名さんは、最近は科学者、研究者にそういった役割がまわっていっているが、そういった人たちはどうしても自分の専門とする範疇を超えることができない。H・G・ウェルズの『解放された世界』などを読むと、人類全体や文明の行く末についての真剣な主張が心を打つ。未来のヴィジョンを提出するためのエンジンとして、小説は強い力をもっているのでは、とおっしゃる。
かつて、ネクシャリスト(ヴォークトの『宇宙船ビーグル号の冒険』に登場する「総合科学者」)たるのがSF作家のつとめでは、といわれたことがありましたが、その瀬名さん的ヴァージョンと捉えればいいのでしょうね。
瀬名さんの考えるSF像は、趣味の世界に没頭しきるのではなく、社会とコンタクトし、社会に向かって開けている部分が不可欠なものと受け止めました。
SF作家クラブ50周年を世の中に喧伝するためには、こうした立場を強調する必要があるでしょう。そのために会長が先頭に立って頑張っている現状を後押ししたいと思います。
ところで、この日のSFブックミュージアム開設に合わせて瀬名さんが刊行した2冊の本――『大空のドロテ Ⅰ』(双葉社)と『SF作家 瀬名秀明が説く! さあ今から未来についてはなそう』(技術評論社)のうち、『大空のドロテ』には私も強い思い入れがあるのです。
本書の原型は、雑誌〈小説推理〉の2002年8月号から2004年2月号まで連載されたもの。その連載を開始するにあたって、グラビアなどで予告を打ったのですが、その際、一緒に所沢の航空発祥記念館まで出かけ、20世紀初頭の飛行機を眺めたりしながら、飛行機のこと、アルセーヌ・ルパンのことなどをうかがったのでした。
あれから10年。その間に瀬名さんは飛行免許を取得し、ご自分でも操縦桿を握るようになった。内容がぐんと充実し、さらに読み応えがあるものになっていると思います。三ヶ月連続で刊行される『大空のドロテ』。楽しみにしています。
今日の午後はお江戸日本橋亭に出かけ「月亭八天TOKOYO独演会」を聞いてきました。
「噺をノベル!」で八天さんの高座を聞き、ぜひ古典も聞きたいと思っていたところ大ネタ「らくだ」をやるということで、願ってもない機会。
いやあ、堪能しました。気弱なクズ屋が大トラに変身してゆく芸の見事さ。また聞きたい。