日本の株式市場が活況である。昨日(12月1日)日経平均が終値で5年振りに1万5千円を回復した。日経新聞で市場関係者の意見とやらを見ると来年3月末までの高値を1万6千円程度と見る向きが多いが、本日も2百円近い上げでありこの勢いでいくと、1万6千円など数日で達成しそうだ。まさにミニバブルの様相を呈している。歴史は繰り返すものなのだろうか?
と思っていたらエコノミスト誌に「日本の不動産市場は再バブル」という記事が出ていた。記事の内容自体目新しいものでも、深く突っ込んだものでもないが多少市場に警鐘を鳴らすものだろう。もしエコノミスト誌が今後も日本の不動産市場について記事にするようなことがあればそれこそ要注意だ。以下記事のポイント。
- 最近日本で18のホテルが建物崩壊のリスクから閉鎖された。幾つかの共同住宅もまた詳細な検査を受けているところであり、住民は退去させられる可能性がある。(余談だが協同住宅にFlatという用語を使っている。日本で誤用しているマンション=Mansionは大邸宅の意味なので軽度の地震で崩壊する建物がマンションである訳はない)
- この耐震強度偽装スキャンダルは特に住人や物件所有者を苦しめているが、日本の不動産市場に身震いさせるような思いを送っている。そして急成長しているREITs市場を傷つけるかもしれない。
- 3~5%の賃貸利回りと長期国債1.5%の利回り格差はある種の地域の物件を魅力的なものにしてきた。またREITsやプライベート・エクイティは邦銀から超低利の借入を行なっているので、幾つかのファンドは投資家に20%もの利回りを約束している。
- これらのファンドは幾つかの地域で不動産価格を押し上げてきている。大部分のファンドは殆ど開示を行なっていないので、数字は不完全なものだが、三井不動産によれば、REITsと私募不動産ファンドの合計額は10兆円(REITsは3兆円強)でこれは日本の投資適格クラスの不動産の10~14%に相当する。三友システム鑑定はこれを「再バブル=re-bubble」と呼んでいる。
- 不動産価格が上昇しているのは、限られた地域なのでこれは15年間続いた不動産市場のスランプが終わりの時期になったという楽観的な考え方もある。しかし三友はそうではなく再バブルは1年程度ではじけると言う。三井不動産のデータによれば、2000年から昨年の間に東京中心部の商業不動産の賃料は約四分の一下落している。
- またUBS東京はREITsは長期的投資家の傾向があるが、市場の四分の三を占める私募不動産ファンドは半年から3年で物件を売る意図なので、物件価格の確固とした底支えとはなり難い。
- またREITsは借入比率が6割であるが、魅力度の低い物件を保有する私募ファンドは借入比率が9割に及ぶ。このことは日本の銀行、特に小さな銀行に対する疑問を投げ掛ける。ファンド向けのローンはノンリコースローンなので、物件の関係会社による救済は望めない。またより小さな銀行は投資家としてREITsにも投資しているので彼等のリスクは倍になっている。
- これがどれ位の懸念材用であるか?1980年代の規模でないことは確かだ。しかし誰も実態を知らないことでは当時と同じ悩みの種である。監督当局でさえ大部分の銀行がどれ程不動産ファンドに融資しているか検討がつかないことを認めている。銀行は手痛い眼にあっているが、用心深くはなっていないのである。
私としてはこの件についてエコノミスト誌の予測が当たらないことを希望している。しかし日本株の復活を含めて、過去を見るとかなりの確度でエコノミスト誌の予測は当たっているのである・・・・・・Be shyというほかない。