金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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高速道路債、超長期債の試金石になるか?

2005年12月07日 | 金融

昨日(12月7日)の日経新聞に独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構が20日に国内初の40年債を発行するという記事があった。利率は2.99%で超長期債の発行で金利リスク上昇リスクを避けるというコメントが付いていた。この超長期債の発行が今後日本の金融市場にどのような影響を与えるか少し考察してみよう。

まず同日付のウオール・ストリート紙の関連記事から見てみよう。

  • アナリスト達によればこの機構債は日本政府が超長期国債を発行する道を開く可能性があると言う。(現在最も長い国債は30年債)
  • ほんの一握りの政府や企業のみが30年を越える債券を発行している。フランス政府は今年2月に50年債を発行し、続いて英国が50年債を発行した。
  • 財務省筋はこの40年債の売れ具合に興味があると言う。
  • 幹事会社のゴールドマン・ザックスによれば、この40年債の買い手は生命保険会社・信託銀行、投資信託、資産運用会社、公的機関ということである。幹事会社によれば「40年債のベンチマークはないので、投資家の意見を聞きながら需要を積上げたところ多くの需要があることが明らかになった」ということである。

発行体側に金利が低いこの時期に超長期債を発行する需要があることは明白だが、投資家サイドに何故強い需要があるのか?を考察する必要がある。そのために超長期国債の先導者であるフランスと英国の事情を見てみよう。

フランス超長期国債はシンジケート方式で発行されたが、3倍以上のオーバーサブになった。英国はオークション方式なので単純比較はできないが1.6倍のカバー率であった。いずれにしろ相当な人気である。

英国の国債発行当局によれば、超長期国債の主要な買い手は年金基金である。年金基金が超長期国債を購入する理由は、国際会計基準の適応と規制強化で年金債務と年金資産のデュレーション(満期までの期間)のミスマッチの削減が求められているからである。

若干解説を加えると、企業や年金基金にとって加入者に対する年金支払債務の時期は極めて長い。一方年金資産の運用を10年程度の債券で行なっているとする。この場合金利が低下すると債務・資産とも評価額(現在価値)が拡大するが、デュレーションの長い年金債務の拡大の方が年金資産の拡大額を上回るのである。これがデュレーションのミスマッチ・リスクである。このリスクを回避するため、年金基金は資産サイドのデュレーションの長期化を図るべく超長期国債を購入するのである。

日本の企業年金基金も同様の問題を抱えているため、超長期国債が選考される可能性が高いと考えられるがクーポンレートの水準は大きなポイントになる。その点からも機構債の売れ行きは見ておきたいところだ。仮に機構債の発行利回りが3%程度で成功するならば機関投資家が長期的に見て3%程度を座りどころの良い金利レベルと見ていることになる。

仮に日本政府が超長期国債の発行に踏み切り成功した場合次のような影響を考えておく必要がある。

  • 10年国債等期間の短い債券から超長期国債へのシフトが起こる結果10年国債等の需給環境が良くなり金利を押し下げる効果がある。
  • 英国で起きている様に年金基金が株式投資ウエイトを下げて国債投資ウエイトを高める可能性がある。この場合は株式市場に売り圧力が働く。

この程度のことを頭に入れながら高速道路債の売れ行きを見ておくことは悪くない。

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