金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

活発なM&Aが株価を押し上げる

2006年03月31日 | 株式

3月31日のウオール・ストリート・ジャーナル紙は「日本株投資家はM&Aの成果を刈り取る準備をしている」という題で、今後も活発なM&A活動が株価を押し上げるという見解を示した。ポイントは以下のとおりだ。

  • 2005年に日本のM&A件数は2,525件になった。これは前年(2,091件)比22%アップで過去最高記録だ。(トムソン・ファイナンシャル社調べ)
  • 強い経済とともに、M&Aの洪水が昨年の日経平均を40%以上押し上げた。というのは企業は注力分野を強化するために買収を行なったり、ビジネスモデルに合わなくなった部門を売却することで企業価値を高めたからだ。この傾向は続くと思われる。今年初めから629件のM&Aが発表されているが、これは昨年比3%増。因みに日経平均は今年6%近く上昇している。
  • 政府もM&A熱を後押ししている。5月1日の会社法改正により「株主総会の承認がなくても買収を行なうことができるケースが認められる」のでM&Aがよりやりやすくなる。
  • 更に2007年には外国企業の自社株(つまり外国株)との交換によるM&Aが認められると期待される。
  • 日本のM&Aは従来は強い会社が弱い会社を助ける救済型が多くしばしば政府が救済を助長した。しかし現在のM&Aはもっと戦略的になってきている。すなわち買手企業は将来の成長のために新しいオペレーションを買い、売手企業はコア・ビジネスに特化するためにノン・コア部門を売却する。買収側・売却側双方がより強くて価値がある企業を作るので、双方の投資家が利益を得る。
  • 日興シティのモア・アナリストは「一つの企業戦略としてM&Aを採択することが広がっている。これが今年の日本株を2割押し上げる働きをするだろう」と言う。
  • 例えば既に日本電産はニッチな分野の小さい企業を買収するというご都合主義的なM&Aを行なっている。また楽天のように全く新しい分野の企業を買収するケースもある。これは欧米ではしばしば使われるビジネス・モデルであるが、日本では今ようやく信頼を得だしたところである。楽天は1997年の設立以来約30社を買収してふるいにかけてきた。売上と利益を支えるビジネスラインを拡大することで、楽天は株価を過去5年で10倍に高めた。昨日の楽天の株価は103,000円だが、2001年3月の同社の株価は10,000円だった。

記事はこの後も続くのであるが、ポイントは企業がコアビジネスに資源を集中するM&Aが活発になることで、買手・売手双方が企業価値を高めることができるというものだ。

株式投資の観点から見れば、M&Aにより企業価値を高めることが出来る会社を先回りして買っておけば良いのだが、どのような企業がその候補になるのだろうか?私が思いつく条件は以下のようなものである。

  • 成長分野にコアビジネスを持っている
  • 迅速・果敢なM&Aを推進する強力で目の利いた経営陣がいる
  • 買収になれた社風があり、被買収会社・部門を短期間で活性化できるノウハウ・人材を保有する。

なおM&Aが活発になると当然それを仲介する証券会社の収入も増えることになるので、野村證券等大手証券会社はこの点からも注目してみたい。

コメント
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