goo blog サービス終了のお知らせ 

金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

山スキーが温泉巡りに変った

2006年03月21日 | 

お彼岸の飛び石連休は間の月曜日を休みにして,山スキーを計画した。行き先は谷川岳の東側・白毛門から朝日岳に登り、ナルミズ沢の源流を滑降するというものだった。相棒は例によってM君である。

19日(日曜日)M君の車で水上から白毛門の上り口にある「土合山の家」に入る。午前10時頃だった。この日は滑り降りてくる予定の東黒沢の下部を偵察する予定だったが、風雪が激しいので偵察を見合わせる。宿の部屋の準備も出来ていないので、車で宝川温泉の露天風呂に入りに行く。土合から16,7km、車で約30分の距離だ。宝川温泉は汪泉閣http://www12.wind.ne.jp/takaragawa/という宿一軒の温泉である。日帰り入浴の露天風呂は日本一を掲げるだけあって1,500円とかなり高い。私は銀行の池袋支店で働いていた頃、社員旅行でこの温泉に来た記憶があるが、25年位前のことなので細かいことは覚えていない。ただ夜中にかなり広い露天風呂にぽつねんと入ったことと熊がいたことを漠然と覚えているのみである。

今回も熊はいた。檻の中をうろうろしている。飼育係りのおじさんに聞くとここの熊は冬眠しないそうだ。冬眠できる環境にないから冬眠しないのだろうが、寝るべき時に寝ないと体調が悪くなるのではないかと心配ではある。

さて1,500円の露天風呂。さすがに湯加減・湯の質とも上等。メインの混浴露天風呂に入ってしばらくしていると、胸をバスタオルで包んだ妙齢の女性が入って来た。「おっ」と思ったら後から男性が付いて来るではないか。ここはカップルで露天風呂に入る人が多い様だ。ちょっと羨ましいがそれはそれとして中々良い風情である。

宝川温泉から土合に帰っても風雪はますます強くなっている。宿のテレビではWBCの野球ゲームが映らないので、水上駅付近まで車で出かけて喫茶店でテレビを見た。45分間の雨による中断はあったが、上原の好投と福留・イチロー達の活躍で日本が韓国を6-0で破る快挙だった。

さて翌日20日の月曜日。朝5時起床で白毛門アタックという計画だったが、僕もM君も窓越しに横殴りの雪嵐を見て寝床で惰眠をむさぼった。平地でも新雪は4,50cmは積もっている様だ。実のところ寝床の中では白毛門のアタックどころか車を走らせて帰ることが出来るかどうか心配だったが、これは朝早くからラッセル車が走っていて問題はなかった。結局白毛門アタックはやめにして「丸沼高原にでもスキーに行くか」といことで8時頃宿を出た。沼田まで一般道を走り丸沼に向かったが、途中から積雪が激しくなりノーマルタイヤのM君のレガシーではこれ以上危険と判断して止めにした。でもさすがに四輪駆動のレガシーである。今回の雪道走行は実に安定していたことを付け加えておこう。

そこで又温泉に入ることにして伊香保温泉に向かう。伊香保近辺は群馬県北部と打って変り全くの晴天だ。時間があるので伊香保を通り過ごして榛名湖までドライブしてから、伊香保温泉の露天風呂に入った。

伊香保温泉の露天風呂http://www.asahi-net.or.jp/~UE3T-CB/spa/ikaho/ikaho.htmは温泉街の一番奥にある。直ぐ手前には駐車場もあるが、車でないと少し坂を登ることになるだろう。入浴料は4百円と良心的だ。着替えを入れるロッカーも無料でまことに気持ちが良い。お湯は当然源泉掛け流しで湯音が43度というのも都合が良い。値段だけで良し悪しを云々するのもいけないが、私は宝川温泉よりも伊香保温泉に軍配を上げたい。宝川温泉はみやげ物屋に安っぽいおもちゃなど置いてあり、少し現代感覚が欠如している様な気がした。これに比べて伊香保温泉は何処か乾いた明るさが現代的で良い。

さて自宅に帰ってテレビを見ていると、ニュースがこの飛び石連休での山岳遭難を伝えてきた。八ヶ岳連峰の阿弥陀岳で3人が絶望的とか谷川連峰最高峰の仙之倉山で2人が危機状態とか・・・である。いずれの山も最近積雪期に登ったり、近くを通ったことがあるだけに他人事とは思えないニュースだった。

この飛び石連休の天候は普通の登山者の想像を超える悪いものだったのではなかろうか?私も実のところ低気圧がモロに影響する日曜日の天気は悪いものの月曜日にはかなりり良くなると踏んでいた。ところが日曜日の夜から月曜日にかけて天候は極めて悪かった様だ。もし日曜日に山に入っていたならば、我々もかなり手痛い目に会ったことは間違いないと思う。ということは実のところ遭難するもしないも紙一重程度の判断や運が決めているのかもしれない・・・。

遭難パーティの留守部隊のメンバーがTVのインタビューに答えていた。「遭難したパーティのリーダーは経験豊富な人間なので危険を冒すことはないと思う・・・」 苦難に会われている方の言葉の揚げ足をとる積もりはないが、この言葉には少し引っかかるものが残った。

不幸にして遭難で一命を失われた方には心よりご冥福をお祈りしたい。しかし公平のためやはり冬山登山は相対的に危険な行為であるということは言っておかざるを得ない。冬山に入ること自体がある程度危険ことであることはキチンと言っておきたいことだ。冬山には「強い風雪」「予想を超える寒気による凍傷」「雪崩」「隠れたクレバス~雪の割れ目~」「滑落」「視界不良による彷徨」といった夏山にはない困難がある。登山者はこの困難に対応するべく準備をする訳だが、困難の度合いが想定した準備を超える時それは危険に変るのである。

冬山を美化する商業山岳雑誌が出回ったり、山岳ガイドが経験の浅い人を冬山に連れて行くことも冬山事故の増加の一因であろう。私の相棒のM君も私よりはるかに熱心に山岳雑誌を読んでいて「ここに行きましょう」とか「次あそこ、やりたいですね」と意欲をかき立てている。冬山は魅せられた者にとって誠に強い磁力を持っているのである。

それ程日本に冬山は美しい。世界でも有数に美しい山岳風景だ。しかし日本の冬山は同時に世界でも有数に厳しい山なのである。責任ある立場の者は喜びと危険の双方を一般の人に正しく伝える義務があるはずだ。

我々が今回登山を中止して、温泉巡りをしたことは恐らく正しい判断だったと思っている。しかし私は次も同じ様に正しい判断を下せるのだろうか?と考えると覚束なくなってくる。冬山登山とはそれなりに経験を積んだ者にとっても、誠に厳しいものであると言わざるを得ないのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする