今(3月1日)現在民主党の永田議員発言問題はまだ決着しいていない。それどころかこのまま行くと民主党の弱さが益々露呈してしまう状況だ。これについては日本の新聞には爆弾男が自爆したなどという言い方が出ているが、英語ではBackfireと言う表現が洒落ている。Backfireつまり逆噴射、裏目に出るということだ。さてこの問題を戦術論的観点から孫子の兵法の俎板に乗せて何が問題なのか考えてみようというのが今日の試みだ。
まず情報分析能力不足
孫子は「ただ名君賢将の能(よ)く上智を以って間となすものにして必ず大功をなす」「微妙にあらざれば間の実を得ることあたわず」と言う。間とは間者のことである。つまり極めて優れた人間がちょっとした兆候から真実を嗅ぎ分ける能力を発揮して、初めて間=間者・スパイを使うことができるということだ。
私は永田議員が積極的に間者を使って武部情報を探ったと言っている訳ではない。しかしどこから情報を入手した訳だから消極的にせよ、間者を使ったと同じ効果を狙った訳だ。ただそこから先がいけなかった。永田議員は微妙な兆候から真実を嗅ぎ分ける能力がないためガセネタを掴まされ墓穴を掘ってしまったのである。情報分析能力のないものが諜報活動まがいのことをするとこの様に惨めな末路を辿るという一例だ。孫子は「爵禄百金を愛(おし)みて敵の情を知らざるものは・・・人の将にあらざるなり」という言葉で諜報活動の重要性を説くのである。
次が統制不足
孫子は地形編の中で「将弱くして厳ならず、教道明らかならず、吏卒常なく、兵を陳して縦横なるを乱という」と述べる。つまりリーダーが弱くて厳しさを欠き指導方針も不明確で部下が動揺し戦闘配置が乱れている状態を乱というのだが、まさに今の前原代表の状況を表している。
次に統一理念の欠如
教道明らかならずに関連していえば、そもそも民主党には孫子の言う「道」というものが欠けているのかもしれない。孫子はまず最初に戦争をするには5つの要素を見極める必要があると言う。5つの要素とは道・天・地・将・法であり、その筆頭の道とは集団に統一性をもたらす基本理念である。孫子が道を最初に置いた意味は大きい。私は民主党に欠けているのはこの集団に統一性をもたらす道=基本理念ではないかと考えている。これに対する小泉自民党は改革という明確な道を掲げ、党内の反対分子を切り捨てることで集団の統一性を高めたのである。
次が不利な時の対処に誤りがある
孫子は地形編の中で六つの地形に大別してそこでの戦い方を示す。地形を広く解釈すれば状況ということだ。将=リーダーとはこの地形=状況を判断して戦うか退くかを決めなければならないのである。今の民主党の状況は孫子が言う「険形」に相当する。険形とはなにか?険形とは険しい地形であり、孫子は「敵まず之(険形)に居らば引きて之を去り従うことなかれ」と言う。もし敵が高台を占めているような場合はこれを避け、相手にしてはいけないということだ。民主党は自分で墓穴を掘ってしまった結果、今自民党が高台にいる訳だが、こういう場合はさっさと引き下がるのが戦略であろう。謝るべきは謝り出直すということでなくてはいけない。これを間違えてウダウダ言っていると損害が拡大するばかりである。
最後が厳正な処罰の欠如である
孫子が厳正について述べている文章は幾つかある。まず始計編で「将は智・信・仁・勇・厳」という。つまり厳正さはリーダーの重要な要件の一つというのだ。また行軍編で「卒すでに親附してしかも罰おこなわざれば、すなわち用うべからざるなり」と言う。部下がなじんでいて過失があってものこれを罰しないのでは狎れてしまって使えなくなるということだ。
以上が現在孫子に照し合せて民主党が犯している戦術上の誤りである。一党を御せない指導者達に国民は国の命運を託す気持ちにはならないと思うのだ如何なものだろうか?