金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

デジタル一眼レフの新たな戦い

2006年03月24日 | 写真

最近のエコノミスト誌にデジタルカメラ市場に関する記事が出ていた。ポイントは新規参入者の出現により、競争がますます激化するというもので、私の様な一眼レフユーザにとっては価格低下が見込まれるので嬉しい話ではある。一方新しいカメラを買うなら、新規参入者の新製品をちょっと待ってみたい気もする。

まずは記事のポイントを紹介しよう。

  • 今月末コニカミノルタは最後のカメラを作ることになる。100年以上の業暦を持ち、世界第3位のフィルムメーカーでもある同社は写真事業からの完全撤退を開始する。将来同社は複写機、プリンター、医療機器に集中していく。同社はデジタルカメラによってもたらされた業界の変化の直近の犠牲者である。
  • デジタル時代の犠牲になった他の大手企業は米国のコダックだ。同社は昨年14億ドルの損失を出したが、まだリストラ途上である。日本の富士写真はコダックに次ぐ世界第2位のフィルムメーカーだが、この伝統的事業からの収入減は予想よりもはるかに早い。
  • デジタルカメラの売上は10年強の間に急増し、今やほぼフィルムカメラを代替している。しかし今やそのデジタルカメラビジネスも成熟している。2000年から2005年にかけて世界全体のデジタルカメラ売上高は670%成長したが、販売台数は鈍化してきている。2009年までにデジタルカメラの世界全体の年間販売台数は、1億台を越えると予想されるがその成長率は僅かに26%である。デジタルカメラは急速に成熟した消費財になっている。
  • 人々をより高価なデジタルカメラに誘導するのは、明らかな反応である。市場リーダーのキャノンとソニーの激しい戦いが薄っすらと見えて来る。調査会社IDCによれば、昨年の世界全体のデジタルカメラ市場におけるシェアはキャノンが約18%、ソニーが約12%、コダックが約12%である。ソニーはコニカミノルタの写真部門を買収しており、その資源を使ってレンズ交換が可能な一眼レフカメラ(digital single-lens reflex camera)群を今夏発表する予定だ。ソニーはニコンやオリンパスを含む幾つかのパワフルなブランドに真っ向勝負することになる。
  • しかしキャノンは本格的な速写カメラマンから最も望まれているブランドである。キャノンはプロカメラマンがスポーツ撮影の時、巧に操る長くて白い望遠レンズを作っている。この一眼レフ市場に攻勢をかけるのはソニーだけではないだろう。その主なライバル松下はパナソニックブランドでデジタル一眼レフを発売する予定だし、韓国のサムソンも一眼レフモデルを開発中である。
  • このトップエンド市場は参入者が混み合ってくるので、利益をあげることがより困難になるだろう。しかし単焦点カメラの市場も同様に厳しい。コダックは取扱が簡単なカメラに特化する意思決定により米国でキャノンやソニーを上回る市場のリーダーシップを維持している。しかし同社もまたユーザを上位機種に誘導する必要がある。コダックは最近カメラから(パソコンを通さずに)Wi-Fi~別途説明する~を使って直接プリンターやインターネットに画像を電送するカメラを発売した。

話はエコノミスト誌の記事からそれるが、ちょっとコダックのプロダクツを調べてみた。製品名はEasyShare-Oneで今年の1月米国のConsumer Electronics Showで発表され、日本では3月17日に初公開されている。これはWi-Fiという無線ラン技術を使って直接画像をインターネットに飛ばすというものだ。Wi-Fi(ワイファイ)のフルスペルはWireless Fidelity。Wi-Fiとは無線LANの標準規格である「IEEE 802.11a/IEEE 802.11b」の消費者への認知を深めるため、業界団体のWECAが名づけたブランド名である。

話がそれたが、エコノミスト誌の記事をもう少し続けよう。

  • コダックと富士写真は損失を相殺するために、デジタル写真プリント拠点(Kiosk)を積極的に拡大している。しかしここでも競争は激化している。ヒューレッド・パッカード社もこの市場に参入することを決定している。
  • しかしどれだけの人がまだ写真を印刷しているのだろうか?数十億枚の画像イメージは紙に印刷されることなく、友人に電子メールで送付されたり、ウエッブサイトで共有されている。IDC社は、多くのデジタル画像が撮影されているのでそれを保存するシステム(オンライン・オフライン双方)の大きな市場が発展すると信じている。伝統的なハードディスクやCDの上に蓄積されたデジタル画像がどれだけ長く保持されるかについて誰も確信が持てないのである。もし人々が長期間にわたって画像を保存することを望むなら、人々はその様な製品やサービスを購入するかもしれない。そしてそれを提供するのはカメラメーカーではないかもしれない。

以上が記事の概要である。記事にもあるとおり今年はソニーとパナソニックが一眼レフ市場に新製品を持って参入してくるので激烈な戦いが予想される。

実は私はオリンパスの一眼レフの愛好者であるが、昨年は競争激化からオリンパスがこの市場から撤退するのではないか?という一抹の不安があった。というのは一眼レフの場合、カメラ本体に対する投資よりも交換レンズ群への投資が大きくカメラメーカーが撤退すると交換レンズ群が無駄になる懸念があったからだ。

しかし今年パナソニックとオリンパスによる一眼レフ共同開発が具体化したので、オリンパスの交換レンズ群が無駄になる懸念はなくなったと安心している。

私がオリンパスの一眼レフを愛用する理由は、フォーサーズ(4/3型のイメージセンサーを使う)システムに基づくデジタル専用レンズを揃えているからだ。これは相対的に短いレンズで大きな望遠効果を上げることができる。つまり小型・軽量レンズを使うことができるのである。これは私の様にカメラを担いで山登りをする人間は有難いことだ。またオリンパスのレンズ特にマクロ系(花などを接写する)レンズの明るさと切れの良さはすばらしいと思う。オリンパスのズイコーレンズは名品である。

しかしメーカーとして見た場合商売が上手いかどうか?というと少し疑問が残る。例えばキャノンは10万円未満の入門機種からプロが使う100万円以上の機種までラインアップがある。入門機種すら十分に使いこなしていない私クラスの者には上位機種の必要はないと思うのだが、キャノンは「いつかはクラウン」効果~昔トヨタがやっていた宣伝で、消費者にカローラからコロナ、コロナからクラウンへの買い替えを訴求していた~を狙い一眼レフユーザーの囲い込みに成功していると思う。

既に述べたとおり一眼レフの場合交換レンズ群への投資額が大きいし、レンズの方がカメラ本体より寿命(物理的にも機能的にも)が長い。従って一度レンズを揃えると他のメーカーに乗り返しにくくなると思う。

これに較べてオリンパスはE-300、E-500、E-330とほぼ同価格帯の機種を投入しているがその戦略に疑問が残る。(もっともE-330は液晶モニターに被写体を写しながら撮影できるという世界初のアイディアを実現したカメラなので斬新性はある)

今オリンパスに必要な製品ラインは投入後時間が経ち過ぎたE-1の後継機となるハイエンドユーザー向けの上位機種を投入することではないのだろうか?消費者は本当にその機能が必要かどうか分からなくても、ハイエンドな製品を持ちたくなる傾向があるのではないだろうか? ノロノロ運転しか出来ない東京でもスポーツカーに乗りたがる様に。

コメント
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