金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

相続も寸劇で理解する時代(2)

2014年03月02日 | うんちく・小ネタ

前のブログで紹介した相続関連の法律問題。1問目は「遺産分割協議が終わった後新たに預金がでてきた。前回の遺産分割協議を見直すことができるか?」という話だが、テレビ番組の顧問弁護士の解説では「当初の遺産分割協議に重要な錯誤があればやり直しとなることがあるが、今回三男が「1千万円の現金について相続を放棄する」とした判断は定期預金証書の発見で覆らないから当初の遺産分割協議は有効で預金証書は3分割するべきだ」というものだった。

人情論はさておくとこの弁護士意見は正しい。半分娯楽番組なので細かい説明はなかったが、相続上「定期預金」のような金銭債権と「現金」は取扱いが違う。定期預金のような金銭債権は一般には遺産分割協議の対象外と言われている。これは相続開始とともに、法定相続人にその持分に応じて当然分割されるからである。一方現金は不動産と同様遺産分割協議が必要である。つまり父親の残した現金は遺産分割協議の対象だが、定期預金は兄弟3人で当然分割されるという話である。

次の寸劇は昨年12月に最高裁が示した新しい判例に基づく寸劇だ。最高裁は第三者から提供された精子で妻との間にもうけた子を初めて法律上の子として認めた。これは兵庫県の夫婦が行っていた特別抗告を認めたものだ。夫婦は新宿区に出生届を提出したが、夫の戸籍の記載から以前は女性だったと分り「血縁がないことが明らか」なので「非嫡出子」として子の父親欄を空欄とした。夫婦はこれに対して最高裁まで特別抗告していたもの。

血縁よりも夫婦の実態を重視した判例だといえる。なお生まれながらの男女の夫婦が第三者の精子提供で子をもうけた時は嫡出子として受理されていたという乖離は以前から問題になっていたそうだ。

夫婦や家族のあり方の多様化で「親子」の認定やそれに伴う相続にも新たな判断が下される時代になってきた。

家族って何なのだろう?と考える機会かもしれない。

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相続も寸劇で理解する時代(1)

2014年03月02日 | うんちく・小ネタ

昨日(3月1日)は一日で相続関係の寸劇をいくつか見た。最初はお昼にNHKでやっていた笑福亭仁鶴の法律相談。相談内容は「父親が死んで1千万円の現金が残されていた。相続人は3人の息子。長男は『事業に失敗して借金がかさんでいるので5百万円欲しい』と言い、次男は『子供の教育費がかかるので5百万円欲しい』といった。独身で目先お金の必要がない三男は二人の兄に譲ってあげることにした。ところがしばらくして父親の遺品を整理していると3百万円の定期預金証書が出てきた。三男は『現金はお兄さん達にあげたからこの3百万円は僕が貰いたい』といった。ところが長男と次男は『現金の配分はもう済んだ話。定期預金は3人で均等に分けるべきだ』と主張した。この争いどちらが勝つか?」(答えは次のブログに書きます)

もう一つは夕方神田美土代町のスナックを借り切って知り合いの弁護士が企画した法律劇による勉強会+飲み会。寸劇は3つあったが一番ホットなトピックを扱った一コマを紹介しよう。

「ある女性研究者の母はデザイナーの夫が亡くなった後男勝りにビジネスに頑張っているうちに自分の中の「男性」が目覚め(性同一性障害)、性転換を行う。そしてついにはある女性と結婚してしまう。そしてその女性は第三者も精子提供を受けて子供をもうけた。ところが母(というか性転換したので今は父)は飛行機事故で突然死亡。相続財産をめぐって女性研究者と義母が対立。論点は第三者から精子提供を受けた子供に相続権があるかどうかという点だ」(答えは次のブログに書きます)

相続というとお金持ちの話、あるいはもっと高齢の方の話というのが少し前までの世間一般の考え方だったかもしれないが、結構身近に取り上げられるようになってきた。知り合いの弁護士のリーガルエンターテイメントは、その弁護士が寸劇のシナリオを書いて、プロの役者が寸劇を演じるという中々本格的なものだった。

私の仕事上の経験からいうとアメリカの裁判は「如何に陪審員のハートをつかむか?」という弁護士の演技の場である。日本にも裁判員制度が導入されて、弁護士もドラマトュルギーを勉強しなければならない時代になったのだろうか?

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