昨日(3月21日)ロシアのプーチン大統領はクリミアとセバストポリをロシアに編入する手続きを完了する法に署名した。
この動きが飛び火したのかどうかは分らないが、同日イタリアのベネト州の独立の賛否を問うネット投票が締め切られ、時事通信によると投票を企画したグループは住民の89%が独立に賛成したと発表している。
ベネト州の州都はベネチア。2007年からベネト州の独立運動を推進しているイタリアのある大学教授によると1797年にナポレオンによりイタリアに併合されるまでベネチアは1,100年間独立を保ってきた。今は再び小さいけれど繁繁栄する小国に戻る好機だと述べている。
ベネチアがイタリアからの独立を望む大きな理由は税金の問題だ。フランスの通信社によると、イタリアはベネチアから毎年710億ユーロの税収を得ているが、ベネチアに公共投資や行政サービスの形で還付している金額はそれよりも210億ユーロ少ないそうだ。だからベネチアがイタリアから独立すると、もっと自分たちの税金を自分たちで使えることになる。
欧州の中で独立の希望を持っているのは、ベネチアだけではない。スペインのカタロニア地方(州都はバルセロナ)やイギリスのスコットランドも以前から独立を希望している。
もっとも専門家はクリミアのケースとベネチアやカタロニアなどのケースは全く異なると指摘している。クリミアの場合は、多数の住民はウクライナ語を話さずロシア語を話すことや、クリミアがウクライナに帰属した経緯(フルシチョフが決めた)などからして、クリミアのストーリーを他の欧州の独立問題に当てはめることはできないという指摘だ。
ベネチアの独立投票に関するイタリア国内のメディアの関心はあまり高くない。住民投票による地方自治体の分離・独立は憲法に違反する可能性が高いからだ。
またイタリアにしろ、スペインにしろリーマンショック後の欧州危機の震源地だ。その震源地の中で相対的に裕福な地域が分離・独立すると残された地域の財政はますます悪化するので、それぞれの国家や欧州連合がこの時期地方自治体の分離・独立を容認するとは全く考えられない。
しかしながら、次の二つのことは頭に入れておきたいと私は考えている。
一つは欧州の中には色々な意見があり、クリミアのウクライナからの分離を支持する意見もある(少数だろうが)ということだ。
もう一つは今後地域格差、特に経済成長力のある大都市圏が経済力の弱い地方を支えることを忌避するため分離・独立を模索する可能性が高いということだ。
これは欧州に限った話ではない。たとえば中国でも起きうる話。ただし共産党の支配力が強い中国では当面の実現性はないと思うが。今世界的に起きている巨大都市圏への人口と経済力の集中という現象は、巨大都市圏の独立という潜在的な運動力を持っていると私は感じている。