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最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

【書評】教養としての宗教入門・イスラムをざくっと理解するに良い本だ

2015年02月04日 | 本と雑誌

後藤さんが「イスラム国」の人質となり、殺害されて以来、イスラム教についてもっと知ろうという声をマスコミなどで耳にする。

私は若い時にイスラム圏(パキスタン)に半年ほどいたことがあるので、イスラムについてはある程度「知っているつもり」(笑)なのだが、改めて「教養としての宗教入門」(中村圭志著 中公新書)を読み返してみた。昨年11月に出版されたこの本は、キリスト教・仏教・神道など世界の8つの宗教を俯瞰した本なので、イスラム教についてそれ程詳しい説明はない。

しかし世界の他の宗教と比較して、イスラムとは何か?とうことを大雑把に理解する上では良い本だと思う。

著者は前書きの中で「本書は『教養としての宗教』ガイドである。宗教を信じる必要はないが、その歴史や世界観について大雑把な知識はもっていたほうがいい」と述べている。

「教養とは何か?」という話をすれば、長くなるが私はざっくと言って「他者を理解することができる知識と道徳観が統合された状態」だと考えている。他者を理解するためには、多様性を理解している必要があり、そのためには歴史や宗教について大雑把でも知識を持っていることが必要だ。

さて「教養としての宗教入門」は、それぞれの宗教について「宗教の教えはみな同じ」という見方と「宗教の教えはみな違う」という見方があると述べている。著者は仏教の法句経、キリスト教の新約聖書、イスラム教のコーランを引用しながら、「いずれも怒らないで自己コントロールを利かしている人を信者の理想としている」点で、宗教の教えはみな同じという考え方が近現代において次第に人気を得るようになってきたと述べる。

だが一方で教義・戒律・儀礼を見ると各宗教は千差万別なので、宗教の教えはみな違うという見方も根強いとも述べている。

同じ一神教でも、キリスト教特にプロテスタント系の人は信仰を個人の問題ととらえ、個人の良心を守ることが先決問題だと考えるが、イスラム教の場合は「社会に唯一神の正義をゆきわたらせるという建前に従い、イスラム法(シャーリア)の体系を築き上げ、それを順守することが一番大事なことになっている。

このような宗教と政治の境界線の問題に着目すると、宗教の教えはみな違うというように見えるかもしれない。

違いに焦点を合わせるか、共通点を強調するかで他の宗教に対する寛容性は異なってくる。私は共通点を強調し、違いはそれぞれの社会やそのベースになる風土・産業・家族構成・社会のセーフティネットに起因するものでお互いに許容し合うという考えが宗教対立の緊張を緩和する道だと考えている。そのためには色々な宗教を大雑把でも一通り眺めてみることは必要なのだろう。

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