今日(12月1日)の読売新聞プレミアム(電子版)にファイナンシャルプランナーの八ツ井さんという方が「老後資金資金設計の前提として明確〇〇万円いるとは誰も言えないのです。強いて言えば神のみぞ知るということでしょうか」と書いていました。
それはそのとおりですが、それでは老後資金の設計はできません。支出が見積もれないので、ひょっとすると必要以上に資金を貯める人が増えて、消費が停滞し経済が活性化しないという現象が起きているかもしれません。
確かに将来の支出そのものは、その人がどれだけ長生きするか?にかかっている部分が大きいので、神のみぞ知るところでしょう。しかしその不確実性を中立化させる方法はあります。
理屈の上では一つは生涯必要な支出を支給し続ける終身年金制度を充実させることです。今の国の年金は終身年金ですが、給付が薄く公的年金だけでは生計を賄うことはできません。終身年金型の企業年金制度に加入している人は長生きリスクをある程度中立化させている言えますが、このような年金制度に加入している人は多くはないでしょう。
今でも苦しい国の年金にこれ以上給付の上乗せを求めることは無理ですし、企業の確定給付年金から確定拠出年金にシフトを図っていますから終身年金の充実は現実的な選択肢ではありません。
そこで考えられる次の手段はトンチン年金と呼ばれる長寿年金を導入することです。
長寿年金というのは、一定年齢(たとえば85歳)まで長生きするとその後は終身年金が給付されるが、それ以前に死亡した場合は死亡給付金は支払われないという仕組みです。日本では販売されていませんが、米国では2004年にメットライフが販売を開始し、その後順調に残高が伸びています。
このような年金があると、高齢者は一定年齢(この場合は85歳)までの資金を準備すれば良い(それ以降は長寿年金で支払われるので)ということになり、資金計画を具体化することができます。
この年金制度では支給開始年齢前に死亡してしまうと、払い込んだ原資は戻りません。戻らないから長生きした人には払い込んだ資金に較べて大きな年金額を受け取ることができる訳です。
このような掛け捨てリスクのある年金が日本でどれ位ニーズがあるかは分りませんが、検討する余地は大いになると思います。
将来のことは神のみぞ知るところなのですが、その不可実性を経済的に中立化する方法(火災保険や生命保険など)を我々は編み出しそれによって安心を得ています。「長生きする」という不確実性にも中立化する手法が必要ではないか?と思います。