金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

老後資金は神のみぞ知る?いや、トンチン年金という仕組みがあるかも・・・

2015年12月01日 | ライフプランニングファイル

今日(12月1日)の読売新聞プレミアム(電子版)にファイナンシャルプランナーの八ツ井さんという方が「老後資金資金設計の前提として明確〇〇万円いるとは誰も言えないのです。強いて言えば神のみぞ知るということでしょうか」と書いていました。

それはそのとおりですが、それでは老後資金の設計はできません。支出が見積もれないので、ひょっとすると必要以上に資金を貯める人が増えて、消費が停滞し経済が活性化しないという現象が起きているかもしれません。

確かに将来の支出そのものは、その人がどれだけ長生きするか?にかかっている部分が大きいので、神のみぞ知るところでしょう。しかしその不確実性を中立化させる方法はあります。

理屈の上では一つは生涯必要な支出を支給し続ける終身年金制度を充実させることです。今の国の年金は終身年金ですが、給付が薄く公的年金だけでは生計を賄うことはできません。終身年金型の企業年金制度に加入している人は長生きリスクをある程度中立化させている言えますが、このような年金制度に加入している人は多くはないでしょう。

今でも苦しい国の年金にこれ以上給付の上乗せを求めることは無理ですし、企業の確定給付年金から確定拠出年金にシフトを図っていますから終身年金の充実は現実的な選択肢ではありません。

そこで考えられる次の手段はトンチン年金と呼ばれる長寿年金を導入することです。

長寿年金というのは、一定年齢(たとえば85歳)まで長生きするとその後は終身年金が給付されるが、それ以前に死亡した場合は死亡給付金は支払われないという仕組みです。日本では販売されていませんが、米国では2004年にメットライフが販売を開始し、その後順調に残高が伸びています。

このような年金があると、高齢者は一定年齢(この場合は85歳)までの資金を準備すれば良い(それ以降は長寿年金で支払われるので)ということになり、資金計画を具体化することができます。

この年金制度では支給開始年齢前に死亡してしまうと、払い込んだ原資は戻りません。戻らないから長生きした人には払い込んだ資金に較べて大きな年金額を受け取ることができる訳です。

このような掛け捨てリスクのある年金が日本でどれ位ニーズがあるかは分りませんが、検討する余地は大いになると思います。

将来のことは神のみぞ知るところなのですが、その不可実性を経済的に中立化する方法(火災保険や生命保険など)を我々は編み出しそれによって安心を得ています。「長生きする」という不確実性にも中立化する手法が必要ではないか?と思います。

 

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サイバーマンディとスマートフォン

2015年12月01日 | ニュース

サイバーマンディとは、米国で感謝祭(11月の第4木曜日)の次の月曜日を指します。月曜日に出社した会社員が会社の高速インターネットを使ってオンラインショッピングを始めたことから、クリスマス前のオンラインショッピングの開始時期を意味します。

アドビによると今年のサイバーマンディ(今週の月曜日)の売上は30億ドルで一日のオンライン売上高としては過去最大です。

ただしスマートフォンから買い物をする人が増えてきたのでパソコン時代の「サイバーマンディ」には少しづつ変化がでています。アドビによると感謝祭とサイバーマンディの前日の日曜日の間で、8億ドル以上のオンラインショッピングが起きていました。

オンラインショッピングの3割強はスマートフォンやタブレットなどのモバイル経由で行われたもので、8割近くはスマートフォン経由でした。この傾向が続くと消費者や小売業者にとって「サイバーマンディ」は特別な日でなくなるかもしれません。

スマートフォンからの買い物が増えている理由は画面が大きくなり、商品の閲覧や購入が簡単になったからです。

米国のスマートフォンの普及率は69.6%で日本の53.5%を上回ります(総務省情報通信白書による)。ただし日本でもスマートフォンの普及率は急速に伸びていますから、オンラインショッピングでスマートフォンの占める地位が今後高まるでしょう。

★   ★   ★

以下は余談なのですが、2012年に発行された「サラリーマン川柳 にんまり傑作選」にはスマートフォンに関する次のような川柳が出ていました。

スマホよりトクホが先と妻が言う

スマホよりらくらくフォンがデビュー待ち

オレの指スマホも部下も動かせず

2,3年前ではスマホを使いこなせない世代がスマホを揶揄することが川柳になったのでしょうね。

最近スマホを取り上げた川柳をあまり見ませんので、私が一つ作ってみました。

妻の持つスマホで心配一つ増え 

(妻がスマホを使うようになったので、また買い物が増えるのでは?と心配のタネが増えたという話です。ただしこれは架空の話です。妻はスマホを使うようになりましたが、ショッピングはPC経由です。さらにいうとオンラインショッピングで無駄遣いをしているのは私の方ですから、妻がこの川柳を見ると怒りそうですのであらかじめ解説した次第です)

慣れないと面白くないスマートフォンですが、慣れる慣れたでお金がかかるのもスマートフォンということです。一般論ですが。

 

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ロボットは雇用を奪うより、雇用を増やす~バークレイズのレポートから

2015年12月01日 | ニュース

SNBCに英国のバークレイズの「ロボットは雇用を奪うのではなく、雇用を増やす」というレポートの紹介があった。

レポートによると、ロボット等オートメーションへ12.4億ポンド(約23百億円)の追加投資を行うことで、今後10年間で605億ポンド(11兆2千億円)経済規模を拡大する効果があり、英国全体では105,800人の雇用維持につながるということだ。

先月(11月)イングランド銀行(中央銀行)は、今後数十年の間に米国で8千万人、英国で15百万人の仕事がロボットに奪われると警告を発していたが、バークレイズのレポートは反対の見方を示したものだ。

もっとも2つの見方は全く反対のものではない。製造工程等の自動化により確実にある種の仕事はロボットに奪われることは間違いない。しかし単純作業から解放された労働者をより、ヒューマンスキルの必要な分野にシフトすることで、雇用全体は拡大すると考えられるからだ。

「ロボット」の範囲を製造工程の自動化のみならず、人工知能の利用による色々な作業の自動化まで考えると、今後20年位の間に多くの仕事がロボットに奪われることは間違いないだろう。

たとえば自動車の自動運転化は今後15年から20年位の間に実用化すると言われているが、そうなると職業的な運転手は大幅に減ることは間違いない。銀行等金融業の窓口も大幅に自動化されるはずだ。

一方対人コミュニケーション能力が求められるカウンセラーや過去のデータに依存することができない危機管理責任者のような仕事は増加する。

ロボットが雇用を奪うか奪わないかの議論は、ロボットにより奪われる雇用に代替する雇用を生み出せるかどうかにかかっているといえる。

少子高齢化により労働力の減少に悩む日本だが、ロボット化をうまく利用すると、ディメリットをメリットに転換することができるかもしれない。つまり労働力の減少をロボットで補うことで、ロボットと人間が単純反復作業的な分野で雇用を争うことなく、労働力をよりヒューマンスキル型の分野にシフトすることが可能だからだ。

20年ほど前、会社でパソコンの活用が一般化した時「パソコンを使えないような管理職は淘汰されるのではないか」という不安が私が勤めていた会社でも起きたことがあった。

だがそれは杞憂に終わった。一般的はパソコンスキルは2,3日集中的に勉強すればマスターできるものだったからだ。

そして淘汰されるのは「パソコンが使えない管理職」ではなく「パソコンしか使えない管理職」だったということが明らかになってきたことを思い出した。求められたのは、ヒューマンスキルや新しい価値を生み出す創造(想像)力だったのである。

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