金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「杉原千畝」からインテリジェンス問題を考えた

2015年12月12日 | 歴史

映画「杉原千畝 スギハラ チウネ」を見て、駐ドイツ大使大島浩について感じたことは前のブログで書いた。

今は更にそれを広げて、戦前の日本のインテリジェンス問題を考えてみた。まずインテリジェンス=情報活動は、二つのレベルに分けられる。英語でいうとインフォメーションとインテリジェンスである。インフォメーションは集めてきた生情報であり、データである。その生情報を分析・加工し、政策の企画・立案のための知識に高めたものが、インテリジェンスである。

非常に大雑把にいうと、戦前の日本は英米に較べ、インテリジェンスを使って政策決定を行うことがうまく機能しなかったといえる。そのことを独ソ開戦前夜の動きを見ながら考察してみたい。

【年表】

1939年8月23日 独ソ不可侵条約締結

1939年8月28日 杉原千畝 リトアニアのカウナスに領事として赴任

1939年9月1日 ナチス・ドイツ、ポーランドに侵攻

1939年9月17日 ソ連、ポーランドに侵攻

1940年6月14日 ナチス・ドイツ、パリに無血入城

1940年6月15日 ソ連、リトアニアに進駐

1940年7月18日 杉原 千畝、ユダヤ人にヴィザ発給開始

1940年8月31日 杉原 千畝、リトアニア退去

1940年9月27日 日独伊三国同盟締結

1941年4月18日 大島大使、杉原等の情報を元に「独ソ開戦が近い」という警告電報を東京に打電

1941年6月22日 独ソ開戦開始

「日本軍のインテリジェンス」(小谷 賢)によると「インテリジェンスを担当する参謀本部第二部や海軍軍令部第三部は、独英戦争におけるドイツの優位をそれ程強調せず、特に第三部は英空軍を善戦を強調し、損害は独空軍側が大きいと主張していた」「しかし。ここれらの情報は、英米に偏り過ぎた情報、もしくは『雑音』として処理され、大島浩駐独大使をはじめとするベルリンからの親独的な情報ばかりに注目が集まっていたのである」ということだ。

大島は1941年4月に独ソ開戦が近いという情報を打電するが「(ソ連から)帰国した松岡外相が否定的であり、陸海軍も独ソ開戦せずという空気であったので、そのまま見送られた」

一方5月に大島電報を解読した英国のチャーチル首相は米国のローズヴェルト大統領に「ドイツの対ソ攻撃が迫っている。もし新たな戦線が開かれれば、我々は対独戦争のためにロシアを援護するべきだろう」という秘密書簡を送った。

日本の政府首脳や軍部は「客観的事実に基づいた判断」ではなく、「独ソ開戦はない(だろう)から、日米開戦もない(だろう)という自分にとって都合の良いシナリオにそって情報を取捨選択」したのである。

日本が第二次世界大戦に踏み込んだ大きな理由はドイツの軍事力(戦力+国力)を過信し、かつその野望(ソ連との戦争)を見抜けなかったことにあるといっても良いだろう。

「杉原 千畝」はインテリジェンスの重要性を改めて考えさせる映画である。

なおインテリジェンスが重要なのは戦争や政治の世界だけではない。我々の回りにも「儲け話」のような怪しい情報は飛び交っている。生の情報を鵜呑みにするのではなく、それをインテリジェンスに高める情報処理能力がないと情報氾濫時代を無事に乗り切ることは難しくなっているのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「杉原千畝」~大島浩を考えてみた

2015年12月12日 | 映画

昨日「杉原 千畝 スギハラ チウネ」を観た。第2日世界大戦勃発時にリトアニア領事を務め、迫害されていたユダヤ人にヴィザを発給し、多くの人命(6千名以上と言われている)を救った杉原 千畝を主人公とした映画だ。

杉原はユダヤ人の人命を救ったことで後に名前を知られるようになったが、もう一つ注目するべき点は彼が情報収集に基づき、冷静に日本の敗戦を予想していたことだろう。

杉原(唐沢寿明)は、上司である駐ドイツ大使・大島浩(小日向文世)にしばしば「ドイツがソ連と戦争を開始すれば、日本は米国と戦争を開始することになる。それは大変危険なことだ。」と大島大使が推進する三国同盟を止めるように進言するが、大島は聞き入れない。そして大島は杉原にルーマニア赴任を命じる。「ルーマニアではなにもしなくていい」と言って。

最後に杉原は「私の個人的な予測ですが、日本は負けることになると思います」といって大島の前を下がろうとする。しばしの沈黙の後、大島は杉原を呼び留めて「お前の予想は当たるからな」とポツンといったことが印象的だった。

だがヒットラーに心酔する大島は杉原の諫言を聞き入れず、国の進路を左右する重要な情報を正しく、本国に伝えることなく、日本とドイツは連合国との勝ち目のない戦(いくさ)に突入していった・・・・

外交官として自分の眼で見て集めた情報を冷静に分析し、国の進路を誤らせないように諫言した杉原。ヒットラーに心酔し、冷静な情報分析を怠り、自分の信念を外交政策に投影して国を誤らせた大島。大島は極東軍事裁判でA級戦犯となり、終身刑の判決を受けた。

ここで問われたのは外交官や政治家における「反知性主義の危うさ」である。

大きな世界史的視点と現実の客観的な情報分析を持たずに、自己の世界観で外交や軍事を考えることの危うさである。大島浩は他山の石なのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アカウント番号雑談

2015年12月12日 | うんちく・小ネタ

私の好きな作家の一人角田光代さんの「数の不思議」というエッセーを最近読んだ。

角田さんは「人は、いったいくつの番号を覚えているものなのだろうか。番号・・・家の番地の番号であり、携帯番号であり、口座番号であり、パスポート番号であり・・・かように私たちは番号に囲まれて暮らしている。」と書き出す。

角田さん自身は番号脳なのか、ものすごくたくさんの番号を覚えているそうだが、友人のなかには何ひとつ番号を覚えられない人がいるそうだ。

私自身は比較的番号を覚えている方だと思うが、別に覚えようとして覚えている訳ではない。インターネット取引でよく使う銀行口座(取引)番号などは自然に覚えてしまうようだ。

ところで通販などインターネット取引で使うアカウント番号について、電子メールアドレスをアカウント番号につかう業者と独自のアカウント番号を付与してくる業者がある。

アマゾンなど米国系業者はほとんど電子メールアドレスをアカウント番号にしているので樂なのだが、イオンなどは独自のアカウント番号を付与しているので、覚える(またはどこかに記録しておく)手間がかかり、ついつい取引が疎遠になってしまう。

米国企業がユーザーの利便性とアクセス向上を最大の目標にしているのに対し、一部の日本企業は自社の管理のしやすさを優先しているのでこのような問題がおきるのだろう。

パスワードについては、時々変更することにしているが、以前使っていたパスワードに戻そうとすると、「そのパスワードは以前使っていたので利用できません」というサイトがある。覚えやすいパスワードなんて~実家の電話番号や郵便番号など限りがあるので、これには困ってしまうことがある。

「秘密の質問」の答えというのも時々忘れて困ってしまうことがある。

「母親の旧姓」「出身地」「最初の上司の名前」などという質問に対する答えは忘れることがないので良いが、「好きな食べ物」などという質問には答を忘れて困ったことがあった。私は食べ物に好き嫌いがなく、これが大好きというものは時々変わっている。直前に食べた美味しいものに引きずられて嗜好が変わってしまうからだ。

「初恋の人の名前」という質問もいまではややembarrassment(気まずい)ものになっている。初恋の人は中学生の同級生なのだが、60歳を過ぎて同期会を年1回行うことになり、時々その人に会うことがあるからだ。

中学生の頃のフランス人形のような愛らしさの面影は残っているものの、首筋や手首などにしわが目立つようになってきた。年齢は残酷だな・・・と思ってしまう。そしてわが身を振り返るとすっかり髪の毛が薄くなったことに愕然とするのだが。

アクセスしたサイトから「初恋の人の名前は?」と聞かれるたびにこのことを思い出すので、こんな秘密の質問なんか設定しなければ良かったのに、と反省している次第である。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする