今日の日経新聞ネット版で興味深く読んだ「定年後に起業できる人、できない人」~経済コラムニスト・大江英樹氏~について感想を述べたい。
記事の中で大江氏は「起業に向いている人」「向いていない人」を次のように分類する。
「向いている人」
1)好奇心が旺盛な人
2)何でも自分でやってみたいという気持ちの強い人
3)変化を好む人
「向ていいない人」はその逆だいう。具体的には・・・
1)変化を好まない人
2)物事がうまくいかなくてもじっと耐える我慢強さを持っている人
3)バランス感覚に優れた人
そして「起業に向いていない性格というのは無難な出世の条件にあてはまる」という。
大江氏は「優れたサラリーマンであればあるほど起業には向いていないのかもしれません。・・・・これはどちらが良いとか悪いとかという問題ではなく、自分自身の性格をしっかり見極めた上で起業が向いているかそうでないかを判断する必要があるのです」と結論付けている。
私はこの大江氏の考え方に基本的に賛成であるが、まず「司令官型」「参謀型」というもう一つの補助線を引いて考え方を深めてみたいと思う。
私が思うにビジネスマンとして優秀と思われる人には「司令官型」と「参謀型・スタッフ型」がある。
優秀な参謀と聞いて歴史好きの人ならまず思い出すのが、近代では日戦争で連合艦隊の参謀を務めた秋山真之だろう。秋山は知恵を絞り、T字戦法を改良し、それを採用した東郷長官が揺るぎない決断を持続して大勝利を得た。
~これが一般的な評価。実際には東郷長官も秋山参謀もバルチック艦隊の進路予想に悩みかなり動揺していたが、前連合艦隊参謀長島村速雄がバルチック艦隊の進路は最短距離の対馬沖航路しかないと強く進言したことが日本海海戦の戦果につながったという面がある。もちろん島村の意見を採用した後、東郷に迷いはなかったと思うが~
このことを見ると参謀と司令官では必要な資質が違うことが見えてくる。それは参謀にも司令官にも優れた判断力が必要だが、司令官には更に決断力が必要だ、ということだ。決断力とは判断したことをやり抜く力、部下をしてやり抜かせる力ということだ。
私は起業家にはこの決断力が必要なのだろうと思っている。
サラリーマンは多くの場合、強い決断力がなくても優れた判断力を持っていると優秀と言われる。だが起業家には恐らく判断力だけでは駄目で決断力が必要なのだろう。
ただしこれは大江氏のいうとおり、良し悪しの問題ではない。持って生まれた個性の問題である。判断力に優れた人はアドバイザーやコンサルタントとして決断力の優れた人に判断材料を示せば良いのである。
定年後の生き方を「起業するか?しないか?」という二者択一ではなく、もう少し選択肢を増やして考えた方が自分に合った道を探してみたいものだと考えている。