昨日(1月17日)トランプ次期大統領が、WSJのインタビューで「ドルは強すぎる」と発言し、与党共和党が提案する「国境税(Border Tax)が複雑すぎる」と否定したことから、ドルは通貨バスケットに対し1%下落し、過去1ヶ月で最安値を記録した。
大統領選挙後ドルは通貨バスケットに対し、過去14年で最高値を付けていたが、半値戻しの状態だ。
トランプ氏の発言は、直接的には人民元安を批判したものだが、過去に米国大統領がドルの為替レベルに言及したことはないので、極めて異例の口先介入だといえる。
大統領選挙後の投機家のポジションは、新大統領の景気刺激策や減税策が米国の金利高(=債券安)、ドル高、金利高を好感する銀行株高などに賭けるものだったが、トランプ発言はこの流れに水を差すものだった。
昨日は銀行株が売りたたかれた。金融危機以降で最高の四半期決算の数字を発表したにも拘わらず、モルガンスタンレーの株価は3.8%下落。S&P500の金融セクターは2.3%下落した。
トランプ氏の主張は「ドルが強すぎるので、米国企業は国際市場で競争力を失っている。クリントン元大統領時代に始まったドル高政策に終止符を打つ」というものだが、資本市場の旗手である米国大統領の口先介入ってあり?と首をひねりたくなる。
もっともドルや金融株のラリーのペースが速すぎたので、売り場を探していた投機家が絶好のタイミングと捉えたのかもしれないが。
CNBCはRBCキャピタルマーケットの米国市場チーフストラテジストColub氏の「通貨の価値を動かすのは、市場であり、政治家ではない」「米ドル高を支えているのは相対的に高い金利と米国の経済成長だ」と述べている。
口先介入は長続きしないというのが、為替相場の通則だが、トランプ新大統領の発言が具体策を伴うものかどうかは、今週金曜日の大統領就任演説待ちだ。
ひょっとするとドルが下がった局面は絶好の買い場だったということで終わるかもしれないが、断言はできないので私はここは様子見である。
確かなことはただ一つ。新米国大統領が市場のかく乱要因だということが一層はっきりしたことだ。もっともしばらくするとオオカミ少年に過ぎなかったということで終わるかもしれないが・・・