金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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生成型AIの利用拡大で試されるのは、人間の創造性

2023年07月02日 | ライフプランニングファイル
 ChatGPTに代表される生成型AIに関するWSJの記事を連続的に眺めていると少しトレンドが変わってきたような気がする。
 米国の一定規模の企業で人工知能の業務への利用を企画、決定する立場にあるCIO(情報担当役員)やCFO(財務担当役員)の意識は、生成型AIのリスク有無といった抽象的な問題意識より、どの分野でどのように活用するか?という現実的な判断と実行に移っていると私は感じている。
 生成型AIが即戦力になりうる分野は、コンピュータのコード作成やバグの修正業務だ。
 PythonやVBAの簡単なコードであれば、実は私のような素人でもChatGPTに日本語で命令文(プロンプト)を書いてコードを作成することができる。もっとも業務で使う本格的なプログラムになるとChatGPTは補助的な役割を果たすに過ぎない。もしChatGPTの能力の限界を無視して、プログラム作成を任せるようなことをするとTechnical Debt(技術的負債)という問題を起こす。
「技術的負債」をたとえ話的に説明すると、会社の業務で使っているエクセルなどのマクロ(VBA)が、作成者の退職とともに、修正ができなくなり、業務に支障をきたすような状況だ。つまり個人技に頼り、要件定義書やマニュアルのないプログラムが業務プロセスに散在し、それが不具合を起こした時に大きな問題が発生する状況を「技術的負債」を抱えていると表現する訳だ。
 だがこのような問題を起こさないように注意しながら、生成型AIを使っていけば、システム開発の速度を上げることができる。現在のコード作成業務ではすでにGitHubのように人工知能を活用したツールが使われているが、ChatGPTの普及はより草の根レベルのプログラム開発を可能にする。
 このようなシステム開発特にコード生成業務をどの位AIに委ねるかがCIOの腕の振るいどころだ。
 財務面では生成型AIの力を借りて、予算と実績の差異分析を自動化するとか、アナリストミーティングに際して予想質問を生成型AIに作成させるというような業務が人手からAIに引き継がれるだろう。
 先日に日本の中小企業では、生成型AIの導入に消極的な先が多いという記事をみたが、残念な気がする。人手不足はしばらく続くだろうから、中小企業こそ生成型AIの利用を検討するべきだと私は思うのだが。
 つまり要件定義をコード化していくある意味では機械的な作業や実績差異分析というこれまた機械的で細かな作業は人工知能に任せて、そこで作られた成果物をチェックしたり、それを活用するという作業つまりもっと創造的な仕事にヒューマンパワーを投入できるかどうかが、AI時代の企業の命運を分けるだろう。
そしてそれはこれから働く人の命運も分ける。
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コメント
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