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山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米インフレ5カ月連続で鈍化。とこれでインフレは誰の責任なのか?

2024年09月12日 | 投資
 昨日(9月11日)米労働省が発表した8月のインフレ率は2.5%で5カ月連続で低下した。ちなみに7月のインフレ率は2.9%で、WSJによる事前予想は2.6%だった。
 ただし食料品・エネルギーを除くコアインフレ率は3.2%で先月と変わらなかった。
 住宅関連費用の高止まりで、コアインフレ率が事前予想を若干上回ったことから、今月のFOMCで0.5%の政策金利引き下げの見通しが後退したことから、朝方株は大きく売り込まれた。しかし午後にはハイテク銘柄の反発などにより相場は反転し、S&P500は1%強上昇した。ナスダックは2.1%、ダウは0.3%上昇した。
 昨日の大きな出来事は、大統領選挙のテレビ討論会だった。CNNの世論調査によると討論会を視聴した有権者のうち、民主党のハリス副大統領が「勝利」と答えた人が63%、共和党のトランプ前大統領が「勝利」と答えた人は37%だった。
 さてインフレの問題は、大多数の無党派層にとって最大の関心事で、トランプ氏もインフレはバイデン政権の失政の結果であり、ハリス副大統領にもその責任があるという趣旨の主張を繰り返している。
 少し経済に詳しい人であれば、このような単純な議論には組しないだろうが、インフレが沈静化する中で、米国のインフレの原因は何だったのか?ということを見ておきたい。
 おそらく最大の原因は「コロナショック後、経済活動が急速に回復する中で、急増する需要にサプライチェーンの混乱や労働力不足により、供給が追い付かず価格上昇圧力が生じたこと」だ。
 また「コロナ危機に対応するため、連銀が大規模な金融緩和政策を実施したことで市場に大量の資金が供給されたこと」もある。
 また「政府がコロナ禍で疲弊する経済を支えるため大規模な財政支出を行い、消費者の購買意欲が高まり、需要を押し上げたこと」もある。
 また「コロナ禍で労働市場に大きな変化が起こり、人手不足が生じ、賃金上昇が加速したこと」も原因だ。
 これらの原因を総て現政権の失策のせいだとするのは、無理がある。
 しかしインフレの原因を深く考えない多くの有権者にとっては、おそらく「目の前でモノの値段が上がり続けているかいないか?」で、現政権の政策の良し悪しを判断するのではないだろうか?
 つまり大統領選挙が行われる11月初旬にインフレ沈静化がさらに顕著になっているかどうかが民主党政権に対する評価につながり、大統領選挙に影響を与えることになる。
 経済学的に政治の責任を議論するのであれば、財政支出規模の妥当性を議論するというところだろうが、もちろんテレビ討論会ではそんな冷静な話はでなかった。


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