金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

pay-easyで自動車税を払ってみた

2006年05月12日 | うんちく・小ネタ

私は年齢の割には新しいモノ好きだと思うことがある。新しいことがあると、何でも試してみたくなるのだ。今回は5月末期限の自動車税をpay-easyで払ってみた。

pay-easy(ペイジー)とは、日本マルチペイメント・ネットワークシステム推進協議会が推進する公共料金・税金・携帯電話利用料、インターネットショッピング利用料等をインターネットバンキング、モバイルバンキング、ATMから何時でも支払えるシステムである。

私は三井住友のOne's ダイレクトというインターネットバンキングを利用しているが、サイトに入った後「各種変更・手続き」の中に税金・各種料金の払込という項目を選択する。ここをクリックして、指示に従いながら、収納期間番号や納付番号等の番号等を入力するだけで、自分の口座(通常普通預金または当座預金)から納付金額が引き落とされ、収納機関に支払われる訳だ。支払金額や自分の氏名等を入力する必要はない。この間の所要時間は精々30秒である。

もしこの手続きを銀行の窓口で行なおうと思うと大変である。まず金額が大きい場合は預金口座から振り返る必要があるから、預金通帳や印鑑を税金等の納付書とともに持って、銀行に行く必要がある。朝一番でもない限りまず銀行では、順番待ちをする必要があるだろう。それに預金の払戻依頼書を記入しなければいけない。所要時間は短くて5分、順番待ちがあれば15分位かかるかもしれない。

コンビニでの納付はもう少し簡単だが、現金を引き出して準備しておく必要がある。これにくらべてペイジーでの支払は全く簡単である。

では、ペイジーでの支払が爆発的に増えるかというとそうでもないらしい。その理由は消費者アンケートでは消費者がsecurityに不安を感じているというのだ。確かに銀行やコンビニで支払うとその場で領収印を押してくれるので分かり易い。これに較べてペイジーで支払うと納税証明書は後日郵送されてくるそうだ。(昨日の夜自宅のパソコンで払ったばっかりなので当然まだ納税証明書は送られてこない)

初めてのことだし確かに私も支払の証明がないと万一のトラブルが不安になり、支払番号が入ったパソコン画面をプリントしておいた。

ではそれ以上にsecurityに不安があるか?と言われると、私は余り不安を感じていない。というのは、ペイジー以外に沢山の金融取引(インターネットバンキングや証券のオンライン取引、あるいはアマゾン等でのクレジットカード決済による物品の購入等)を数年にわたって行なっているが特段問題が発生したことがないからである。過去に問題がなかったから将来問題がないという訳ではないが、ペイジーだけに神経質になる理由は全くない。良し悪しは別として今日では金融だけではなく医療から何から何までパソコンとインターネットの上で走っている。インターネット万全という訳ではないが、毛嫌いしても始まらない。

ペイジー pay-easyは無論アメリカで発展してきたインターネットによる支払指図の日本版であり、漸くスタートしたばかりだ。本場のアメリカでインターネットによる公共料金等の支払の割合がどれ位になってきたか?ということは個人的に関心の高いことなのだが、はっきりしたデータは持ち合わせていない。ただここへきてかなりの勢いで増加するのではないかと見ている。その理由はシティバンク等大手銀行が本格的にネットバンキング業務を強化しだしたことだ。

私はペイジーとエディやスイカなどの電子マネーの普及が、いずれ銀行の個人業務を根本的に変えると考えている。何時それが起こるか?という時間軸を横に置き、最終形を述べると次のような形がインターネット(含むモバイル)をベースにした金融取引の姿なのだ。

  • インターネットの利用により銀行・証券会社・生命保険等色々な金融機関にある個人の資産・負債を統合的にかつ分析的に把握・閲覧できるようになる。これはアグリゲーション・サービスというもので米国では既に普及しつつある。個人の資産・負債もポートフォリオという概念で考える必要があるので、この統合レポートの様な機能が必要になってくる。この結果普通預金等銀行の通帳が廃止され、月1回の異動明細書のネットでの配信(または郵送)が一般的になる。なお預金者は何時でもインターネット経由で残高、異動明細を閲覧できる。
  • 公共料金や税金その他の支払が、総てペイジーで行なえる様になる。この時金融機関の窓口で支払を行なうと手数料を取られる。
  • 顧客は定期預金・外貨預金等各種の金融商品を総てネットで購入できるようになる。銀行は競争激化から預金金利を引き上げ、販売手数料(投資信託)を引き下げる。
  • スーパーストア、コンビニエンス・ストア、大手ディスカウントショップ等で、スイカ等の電子マネー決済が普通になる。顧客は銀行・郵便局の預貯金口座から、あるいは証券会社のMMF口座、あるいはクレジットカードからの振替をインターネット経由で行い、銀行の窓口・ATMを利用することなく小口現金を電子マネーという財布に入れることができる。
  • 航空会社のマイレッジや大型家電店のポイントが、電子マネー口座に振り返られることが一般的になる。つまり発行会社だけ利用できたポイントが一般的に利用されることで、現金値引きと全くかわらなくなり一部の店はポイント制度を廃止する。
  • 大手の銀行はインターネット・バンキングに対する顧客の不安を解消するため、securityを高めるとともに、顧客の善意・無過失の場合は、第三者による不正等を補償することを決める。これによりインターネットバンキングが飛躍的に普及する。

というのが私の予想だ。そもそもコモディティ業務(公共料金の支払等)における銀行のサービスとは「如何に顧客を待たすことなく正確で迅速な処理をおこなうか?」ということに尽きるのである。その究極の形は消費者が銀行に行かずに自分のパソコン・携帯電話で都合の良い時に素早く処理をするということに収斂するのである。

また銀行は利用チャンネル等により手数料の差別化や金利の優遇化をもっと徹底し、自分が望むチャンネルやサービスに顧客を誘導しなければならない。私は三井住友で無通帳の普通預金を使っているが、若干のポイントを貰っている。このポイントは送金手数料に充当できるので、時々手数料なしで送金するメリットを得ている訳だ。この普通預金の無通帳化ということは各銀行がもっと強力に推し進めるべきことこではないか?と私は考えている。

以上がペイジーで自動車税を払うという小さな行動から垣間見た銀行の将来像だ。

さてインターネットバンキングが普及した時、同じようなサービスを提供する銀行が今ほど必要なのか?という疑問が起きるがこれも当然の帰結かもしれない。

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