少し前(7月7日)のWSJにモルガンスタンレーのジェームス・ゴーマンCEOが金融機関の将来の姿について予想を述べていた。
ポイントを紹介しよう。
- 今後も銀行は「信用仲介」と「資金決済」という重要な役割を担うので存在する。
- しかし「情報技術の発達」「グローバリゼーション」「人口動態の変化」により銀行業界の姿は大きく変わる。特に情報技術の発達により競争とディスインターミディエーション(銀行離れ)が加速する。
- 米国にある約9万7千の銀行の支店は1万店までに減少する。そして残る1万店舗は、貯蓄や投資についての教育と討論の場所やハイエンドの商品やサービスに出会う場所になる。
- 一方世界規模で企業や国家に資金を供給する大手銀行には引き続き大きなビジネスチャンスが存在するだろう。
- 金融セクターの中では資産運用業務が単体では一番大きな業務になるだろう。
将来生体認証などの方法で本人確認の安全性が高まると、個人がそれぞれの電子端末で支払を行うようになるので、やがて通貨は「貨幣記念館」行きになる・・・というのがゴーマン氏の予想だ。
以上の話に時間軸はない。いつアメリカの銀行店舗の9割が消えるかは予想されていない。
過去を振り返ると将来のことを「いつ起きるか」まで予測することは難しいが、「いつか起きる」と多くの人が考えたことはやはりいつか起きている。
20年ほど前ニューヨークにいた時、バーンズアンドノーブルという巨大書店チェーンが私の住んでいた街の近くに店舗を出店し、街の数件の本屋さんが閉店に追い込まれたことがあった。そのバーンズアンドノーブルもアマゾンの無店舗販売の前に苦戦している。そして本の販売の世界では電子本がシェアを伸ばしつつある。
このようなことを20年前に正確に予想できた人はどれ位いただろうか?
そのように考えていくと、やがては街角にある銀行の店舗は激減するのだろう。
ところでこの数字を日本に当てはめて考えてみよう。
日本の銀行の国内店舗数は全国銀行13,325、信用金庫7,451。これにゆうちょ銀行(含む郵便局窓口)の24,215を加えると44,991だ。他に農林系金融機関等もあるから、ざっと5万店舗である。
日本の総人口はアメリカの4割だ。これをアメリカの銀行店舗数の9万7千にかけると、38,800である。
つまり計算上は現在でも日本の銀行店舗数はアメリカ基準で考えると1万店舗以上多いのである。また昔は銀行の窓口に出向かないとできなかった支払の多くはコンビニの窓口でできることを考えると日本の銀行窓口が相当過剰なことは間違いない。
米国では余剰人員の解雇や店舗閉鎖などが比較的簡単なので、銀行店舗の閉鎖がトレンドになると一気に進む可能性がある。これに較べて日本ではそれほど速く進むかどうかは不明だ。
だがネットバンキングと電子マネーの発展が日本でも大規模な銀行店舗閉鎖を引き起こす可能性は高いだろう。何時かはわからないが。
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