山と渓谷12月号は「本気の雪山」特集を組んでいた。その影響を受けた訳でもなかろうが、相棒のM君が「本気の冬山に行きたい」という。本気の冬山とは何か?私の定義では「標高2,500m以上又は豪雪に植生が完全に覆われた雪一色の山」「登山時期は12月から3月」「アイゼン・ピッケル必携場合によってはザイルを使う」という登山だろうか?今回の横岳縦走は登山時間は短いもののほぼ「本気の冬山」の条件を満たしている。
さて12月3日(土曜日)午前9時前に西東京の自宅を僕のエクストレイルで出発。エクストレイルは既にスタッドレスに履き替えてあるので雪対策は万全である。ゆっくり走って午前11時半頃美濃戸到着。駐車料金は1日1,000円で2日分2,000円を払う。赤岳鉱泉にはゆっくり歩いて午後1:50到着。小屋の前では写真のとおり人工氷壁作成中である。氷壁が完成するとここでアイスクライムの練習をするらしい。曇り空から細かい雪が舞う寒い一日だった。
4日(日曜日)は午前5時起床。昨日はよそのおじさんの鼾で中々寝入れなかったが、それでも6時間位は寝たのだろう。体調は悪くない。それにしても耳栓を持ってこなかったことが悔やまれる。山小屋で耳栓は必須なのだ。5:45真っ暗な中を硫黄岳に向かう。一瞬大同心沢への道に入ってしまったが、直ぐ引き返し午前8時に硫黄岳頂上に立つ。下の写真は硫黄岳手前から見た赤岳と阿弥陀岳である。
硫黄岳頂上は風がきつい。写真は頂上から見た天狗岳と蓼科山。
数枚の写真を撮って直ぐ硫黄岳と横岳のコル・大だるみに下る。硫黄岳山荘の横で一休み。M君がむいてくれたリンゴを食うためオーバー手袋を暫く外す。ところがこれが後でこたえた。横岳へ登りだして暫くの間、手がかじかんで痛くてたまらなかった。体感温度はマイナス15度位なのだろうが、年を取ると毛細血管への血の巡りが悪くなるのか手の指先が冷える。
さて険路といわれる横岳だが、右に大同心の頭を見ながら奥の院(主峰)に向かう。ここはほぼ稜線を忠実に辿るが一部佐久側をトラバースするところがある。これが通称カニの横ばいだろう。
9時36分横岳(2,829m)頂上到着。ここから石尊峰を越え、鉾岳に向かう。鉾岳は諏訪(西側)をトラバースするが、稜線からトラバース路へ下るところが中々高度感がある。今日は積雪が50cm位なので問題ないが、深雪時やクラストした時は要注意だ。次に日ノ岳は佐久側を通り、最後は二十三夜峰に出る。ここも佐久側をトラバース気味に下る。午前11時地蔵ノ頭到着。ザイルを使うことがなかったので、ほぼ夏並のペースで横岳を縦走したことになる。雪は相当強くなり降ろうとする足元から吹き付けてくるので思わず顔をそむける。地蔵尾根の降りは急だ。鎖や鉄梯子を使い慎重かつ大胆に降る。行者小屋には11時40分着。それから南沢を通り13時30分美濃戸着。エクストレイルには雪が積っておりフロントガラスの除雪にちょっと苦労する。
車で20,30分走り富士見高原の「鹿の湯」http://happoen.com/home/index.htmで冷えた体を温めた。鹿の湯は温泉としては余り特徴がないが、洗い場や浴槽が大きくて気持ちが良い。入浴料が5百円というのも好感が持てる。温泉を出て車に戻ると又雪が積もっている。高速道路も雪で50km規制を行なっていた。今年初めての本格的な雪が降ったということである。
こうして今年の私達の「本気の冬山」第一幕は無事終了した。