金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「凍」を読んだ

2008年12月17日 | 本と雑誌

大菩薩峠から帰った日に沢木 耕太郎の「凍」を花小金井の本屋で買った。「凍」は世界的なクライマー山野井 泰史・妙子夫妻がヒマラヤのギャチュンカン北壁に挑み、泰史の登頂後二人は凍傷で手足の指を失いながらも無事生還するという劇的な登攀記録である。

ギャチュンカン登頂の話については私は山野井泰史の「垂直の記録」で読んでいたが、妙な因縁からこの日「凍」を買い一気に読んでしまうことになった。

妙な因縁というのは奥多摩の駅で列車を待っていた時、ふと山野井泰史のことを思い出したことだ。山野井夫妻は・・・奥多摩に住んでいる。「凍」によると「(二人が住んでいる)古屋は奥多摩の駅から奥多摩湖に向かう道路を、渓流に沿って下っていく細いわき道にあった。」

山野井泰史は今年の9月奥多摩湖畔をランニング中熊に襲われて大怪我をしている。もう元気になったろうか・・・・などと私は冷たい雨が降る奥多摩駅で思いを巡らしていた。

それが伏線になり花小金井の本屋で雨の午後読む本を探していた時、「凍」に眼が留まったという訳だ。

ギャチュンカン北壁の下山を読むとこちらの手足に痺れを覚える程の臨場感がある。山野井夫妻の行動も驚嘆するべきだが、沢木の筆も素晴らしい。だが沢木の筆はそこにとどまることなく、山野井夫妻の登攀意欲をささえるモチベーションに及んでいる。

「山野井にとって、八千メートルという高さはヒマラヤ登山に必須のものではなかった。八千メートル以下でも、素晴らしい壁があり、そこに美しいラインを描いて登れるなら、その方がはるかにいいという思いがあった」(「凍」)

山野井泰史は別のところでお金にならず、名声にも結びつかない自分のクライミングを「真剣な遊び」と呼んでいる。

「凍」が深い感動を呼ぶのは、山野井夫妻の超人的な行動や生命力だけではなく、凍傷による指の切断というハンディを負いながらもなお自分の山登りを追い続ける求道者の姿を見るからである。

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連銀、ゼロ金利へ

2008年12月17日 | 社会・経済

昨日(16日)米連銀が政策金利のターゲットを0-0.25%に引き下げた。通常政策金利は一つの金利を示すのでこれは異例。引き下げ前の政策金利は1%だったが、実際には連銀は0%近い金利で融資を行っていた。今回の連銀の動きで着目するべきはall available tools to promote the resumption of sustainable growth and to preserve price stability. という宣言だ。「持続的な経済成長の再開と物価の安定保持のために取り得る限りの手段をとる」というものだ。

また連銀がオバマ政権と密着にタイアップしてデフレ回避に動くという方向感を明示している点も注目するべきだ。

アメリカの特徴は「真の危機に際しては原理原則をかなぐり捨て、国益のために最善の解決策を探る」という点だ。景気の悪化とデフレのリスクを真正面から受け止める現実直視力。中央銀行の独立性よりも国がデフレの淵に沈むことを回避するというプラクティカルな決断。

このような中米国の10年物国債利回りは2.3%近辺まで下落した。私の予想では比較的早い時期に米国は住宅ローン金利を大幅に切り下げて、恐らく新規実行のみならず借換まで超低金利ローンを認めそうだ。

それが住宅価格を安定させ、消費需要を浮揚させる強力な策だと私は考えている。かなりの劇薬であることは間違いないが。

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フリーセックスと男女格差

2008年12月16日 | うんちく・小ネタ

フリーセックスは和製英語で英語ではpromiscuity(相手を選ばない)というのが「学術的」なようだ。カジュアル・セックスという表現は英語にあるが定義が曖昧なようだ。何故こんな話をするかというとエコノミスト誌という硬い雑誌に国別の「相手を選ばないセックス度合いのランク」という記事が出ていたからだ。そのもとになっている研究はBradley大学のSchmittという教授が行ったものだ。

記事から主な国のランクを選ぶと1位はフィンランド、2位はニュージーランド、8位にイスラエル、11位に英国、12位にドイツ、22位に米国、23位にフランス、24位にトルコ、29位にイタリア、日本は43番目で韓国は46番目だ。

エコノミスト誌の短い記事の中には、国別のセックスに対する態度の違いがどこから来るのかという分析は出ていなかった。そこで私はある仮定を立てて、ちょっとした分析を行ってみた。

その仮定というのは「相手を選ばないセックスというのは男女の自立した関係から生まれるので、女性の地位が相対的に高い国つまり男女格差が少ない国で発展するのではないか?」というものだ。これは「北欧を中心とした欧州で相手を選ばないセックス度合いが多い」「北欧等欧州で男女格差が少なそうだ」という直感から来ている。

男女格差については「世界経済フォーラム」が発表しているGender gap 2008の資料を使った。これは「雇用・経済参加」「政治参加」「教育」「健康」の点でその国の男女格差を点数化して国別ランクをつけたものである。

私の仮定はある程度当たっている。具体的にいうとフィンランドは「相手選ばず」で1位、「格差」で2位(順番が高い程格差が少ない)、ニュージーランドは「相手」で2位で「格差」で5位、ラトビアは「相手」で6位で「格差」で10位だ。この当りは高い相関関係を示している。英国は「相手」で11位「格差」で13位だ。だが相関関係があまりない場合もある。フィリピンは世界で6番目に男女格差が少ない国だが「相手」では37位だ。もっと極端な例もある。それはモロッコで「相手」は15位だが、格差では世界最低に近い125位だ。

因みに「相手」で43位の日本は男女間格差では98位と先進国最低レベルだ。これは見事に仮説に乗っている。

「相手を選ばないセックス度合い」が低いのは日本(43位)、香港(44位)、韓国(46位)、台湾(48位調査国中最下位)など極東の儒教文化圏である(中国は調査対象外だったようだ)。ただしイスラム圏の中でもモロッコ(15位)やトルコ(24位)が健闘?しているように宗教の違いも必ずしも説明要因にはならないようだ。

いずれにしても「相手を選ばないセックス度合い」を男女格差や宗教の違いで回帰的に説明するのは簡単ではない。

それにしても日本の男女格差は悪すぎる。これでは色々な意味で「良い男女関係」は生まれないということは確かだろう。

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Sit on ones hand (イディオム・シリーズ)

2008年12月16日 | 英語

昨日米国で11月の鉱工業生産指数が発表された。0.6%のマイナスである。台風の復旧作業で鉱業生産や電力は伸びるなどプラス要因はあったが、全体としては経済活動は縮小している。

ニューヨーク・タイムズはあるエコノミストのコメントを引用していた。"I think it's an indication of extreme contraction in the manufacturing sector," he said. "Right now, I think people are sitting on their hands."

「私はそれ(鉱工業生産指数)は製造業が極端に収縮している兆候だと思う」と彼は言った。「現時点で人々は手をこまねいていると私は考えている」

Sit on ones hand(s)とは「問題に対して行動を起こさない」という意味だ。問題は自然に解決する場合もあるが、放置しておくと悪化が続くことも多い。今回の不況のような場合、民間の力だけでは景気は中々回復しない。政府や中央銀行が積極的に関与することが肝心だ。

米国連銀は政策金利を0.25%か0.5%切り下げることが予想されている。金利の引き下げだけで景気を浮揚させることは不可能だが、日銀のように我関せずという立場を取っているのも多いに問題だ。

その内BOJ is sitting on its handsと言われるだろう。

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「風」は新しい成長エンジンになれるか?

2008年12月15日 | 社会・経済

12月20日付の週刊ダイヤモンドに「金融危機後の世界経済」という記事があり、その中でジョージ・ソロスが次のように述べていた。「ここまで続いたスーパーバブルにおける成長の原動力は米国の消費者でした。米国人は生産する以上に消費してきた・・・・しかしそのエンジンはもはや故障してしまった。別のエンジンが必要になったのです。私の考えではそれは結局エネルギー関連になるでしょう。」

再生可能で地球環境に優しく現実的な代替エネルギーということで注目を浴びているのは「風力発電」だ。風力発電は発電に適した風が吹く場所が限られる日本では注目度が低い。しかし世界的には代替エネルギー源として着目を浴びている。最近のエコノミスト誌にも特集が出ていた。ポイントを拾うと次のようなことだ。

  • 最初に「ウインドファーム」(風力発電所)がカリフォルニアに出現したのは1980年代初めの頃だ。その回転翼は直径15m程度で発電能力は数十キロワットだったが、現在では発電量は数十倍の1.5-2.5メガワットに向上している。回転翼の直径は100m規模に拡大している。
  • スタンフォード大学の研究によると全世界の潜在的な風力エネルギーは7万2千ギガワットで、全世界のエネルギー需要の5倍近い。
  • 風力発電コストは2007年にはキロワット当り10セントで、トン当たり30ドルのカーボンガス課税が行われると、風力発電は火力発電に対して価格競争力を持つ。
  • EUは2020年までにエネルギーの2割を再生可能エネルギーに切り替える目標を設定しているが、風力発電に依存するところが大きい。米国ではエネルギー省が2030年まで風力発電がエネルギー需要の2割に達するという計画を立てている。風力発電設備メーカーには1,2年分の注文が積みあがっている。

風力発電の新しい方向は海上型の風力発電だ。地上型に較べて海上型は建設コストが4割程度高いが、巨大な回転翼を設置できるので潜在的な成長性は高いと専門家は見ている。

繰り返しになるが、日本では風力発電に適した風が吹く建設適地は余り多くない~また回りの海も水深が深いので海上型のウインドファームの建設もコストがかかる~。このため風力発電への関心は余り高くない。だが発電設備メーカーとして三菱重工業などは注目を集めている。

2009年の大きなテーマの一つはクリーン・エネルギーになるだろう。日本の政府も少し目線を高くして、エネルギー問題に取り組むべきだろう。ジョージ・ソロスは「失業者を代替エネルギーや省エネルギー技術の開発などに活用することが世界恐慌から抜け出す道であると信じている」と結んでいた。

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