惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

吉野弘さん

2014-01-22 21:08:47 | ひと

Ume1401  夕方、野川公園を散歩していたら白梅がほころび始めていました。春の兆しを見つけたようでうれしい。
 明日からはもっと暖かくなるようです。

 1週間前に87歳で亡くなられた詩人の吉野弘さんをしのんで本棚から『吉野弘詩集』(思潮社・現代詩文庫)と、岩波ジュニア新書に書かれた入門書『詩の楽しみ』を取り出しました。
 詩集は1974年に出た第9刷。その頃に買ったとしたら、高知で会社員をやっていた時のこと。

 吉野さんの詩といえば高田渡さんが歌った「夕焼け」や、教科書に載ったという「I Was Born」が有名でしょう。が、私が好んで読んだのは、たぶん吉野さんが労働組合活動をやっていた頃に書かれた「burst 花ひらく」や、牛の死骸から逃れる寄生虫を読み込んだ「記録」など。
 「うしろで/優雅な、低い話し声がする。/ふりかえると/人はいなくて/温顔の石仏が三体/ふっと/口をつぐんでしまわれた。/……」という「石仏 晩秋」も好きでした。

 『詩の楽しみ』で吉野さんは次のように詩を定義しています――

 詩とは " 言葉で、新しくとらえられた、対象(意識と事物)の一面である "

 大事なのは「新しくとらえられた」でしょうね。つまりは「発見」ということ。これはどんな表現行為にも通じることだと思います。

 吉野さんはそうした発見を、わかりやすい言葉で、万人が共有できるように表現なさった。厳しい現実をみつめる冷静な目と、そうした現実を温かく受け止めるユーモア。
 そんな詩にずいぶん慰められました。ありがとうございます。

 そうそう、吉野さんにはこんな作品もあります――

       花
     花   死
   花   花   花
   花   花   死   花
苑      苑   苑   苑   苑
   死   死   死   死
   死   死   死
     死   死
       死