郵便局まで年賀状を出しに行った帰り、野川の遊歩道を歩いていたらカモおじさんがカモに餌をやっていました。
カモおじさんは、毎日、自転車の前のカゴと荷台のカゴにパンの耳をいっぱい積み込んで野川沿いを走り回り、カモを見かけると岸からパンの耳を投げ与えています。私が当地に越してきてからずっと見かけているので、もう30年以上もつづけているのではないでしょうか。
そばへ寄って「あけましておめでとうございます」というと、おじさんは最敬礼してニヤリと笑いました。
「大変でしょうが、今年もがんばってください」と私。
「大変だよ。でも休んじゃうと体が変になる。パンの調達も難しくなるしさ」とおじさん。
なるほど、毎日たくさんのパンの耳を手に入れるのには、それなりの苦労があるのでしょう。どこかのパン工場と提携しているのかもしれません。
しかし、立ち入ったことは聞かず、上流はどこらへんまで行くのか、尋ねることにしました。おじさんはずっと下流からずっと上流まで走り回っていて、私はその範囲を知らないのです。
「野川公園のあたりまで行くんですか?」
「いや、もうちょっと先まで」
「前原あたり?」
「いや、そこまでは行かない。あの手前にタンクが並んでいるところがあるだろう?」
ということで、これまで知らなかった野川のウンコ水の話を聞くことになったのでした。
下水処理の仕方が問題で、雨が一定以上降ると、野川には未処理の下水が流入するのだそうです。川の清掃の際、生理用品の残骸などが見つかるのでなぜだろうと思っていたのですが、ようやく謎が解けました。
「ミツカンの水の文化センター」というサイトに「野川を歩く」というページがあります。この中段よりやや下、「西武多摩川線付近。合流式下水道の吐口」という章に、小金井市環境市民会議副代表の藤崎さんの次のような発言があります――
- 「すぐそばを合流式下水道が流れています。雨が20mmほど降ると本管からオーバーフローして排泄物も含めて生活雑排水、いわゆる〈生の水〉が流れます。水質悪化の原因です。多摩川でも同じことが起きていますね。言うなればこれは〈都会の恥部〉ですが、皆さんにはぜひ知っておいていただきたいのです」
まったく知りませんでした。単純に、野川の水はきれいになったと思い、子どもたちが裸足で川に入って遊んだり、釣り糸を垂れる人がいるのを微笑ましく眺めていたのです。
正月早々、カモおじさんに大事なことを教わりました。